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ハビエル・フェルナンデスの新たな旅。
フラメンコと「ユヅルの目力」の関係。
text by
野口美惠Yoshie Noguchi
photograph byAsami Enomoto
posted2019/06/18 17:00
幕張公演でのフェルナンデス(右)とナハーロ。「フラメンコ・オン・アイス」はさらに進化し2020年に本公演を予定している。
人を感動させるための重要な要素。
――最終的には、フラメンコ特有の重みを氷上で再現出来ましたか?
フェルナンデス 練習していくうちに、違う何かが自分の中から引き出されてくる感覚がありました。もともとスケーターとしては、リンクの中で自分を大きく見せよう、表現しようということはやってきました。でもアントニオから教わった表現が加わったことで、単なる腕の動きや目力だけでない、何か……という感じです。
――この「フラメンコ・オン・アイス」は日本で初披露となりました。
フェルナンデス このフラメンコとスケートの融合というテーマが上がってきたときに、本物にこだわった内容で完成させられたら、どこへ出しても通用するという確信がありました。そして、真っ先に届けたい場所は日本でした。
日本人は、他国への尊重や好奇心を持ってくれる素敵な人々ですし、日本は伝統を重んじる国ですから。僕はこの企画を、新たな冒険と思っています。国境を越えて、スケーターやファンに、この型破りで最高に素敵な経験を共有して欲しいんです。最終的には、メトロポリタン歌劇場での公演など、世界的な芸術として披露できればと思います。
ナハーロ このショーは、人を感動させるための重要な要素が盛りだくさんな内容です。想像してください。肉声とギター、会場全体に鳴り響くパーカッションとサパテアードの音、踊るダンサーとスケーター。そこへハビエル・フェルナンデスが圧倒的なパフォーマンスで登場する。
全てが一体化した瞬間を、来場した観客だけが目の当たりにするのです。これこそが“感動”と呼ばれる感情ではないですか? スペインが誇る芸術とスポーツの融合です。誰も見たことのない、スペインを代表する作品を誕生させたと言えるでしょう。
――フラメンコの世界は本当に奥深そうですね。母国の文化という点では、平昌五輪で、ショートの「マラゲーニャ」だけでなく、フリーは「ラ・マンチャの男」を選びました。
フェルナンデス 母国の伝統的な要素や自分が生まれ育った故郷をテーマに取り入れるというのは、その歴史ロマンを再現する事になります。五輪のフリーでは、「ラ・マンチャの男」を滑りましたが、あの音楽と出会い、プログラムを完成させ、五輪の場へ持って行けた事を、心底誇りに思っています。
スペインの歴史的な大作として評価されている文学を取り入れたことで、僕たちの先祖が刻んだ足跡を再認識する、つまり僕らのルーツを再現して、それを数多くの観客と分かち合えたことを、本当に嬉しく思っています。