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ハビエル・フェルナンデスの新たな旅。
フラメンコと「ユヅルの目力」の関係。
text by
野口美惠Yoshie Noguchi
photograph byAsami Enomoto
posted2019/06/18 17:00
幕張公演でのフェルナンデス(右)とナハーロ。「フラメンコ・オン・アイス」はさらに進化し2020年に本公演を予定している。
リズム、世界観を一体化させる。
――ナハーロさんといえば、(ステファン・)ランビエルの「ポエタ」が名作と言われていますが、ハビエルの「マラゲーニャ」との違いは?
ナハーロ ランビエルのフラメンコは、とても現代的なフラメンコでした。ビセンテ・アミーゴ作曲のメロディアスなオーケストラ風『ポエタ』は、近代的ダンスの要素を多く含んだ前衛的なプログラムでした。
一方、今回の「フラメンコ・オン・アイス」は伝統的な要素に重点を置いています。フラメンコの心臓部とも言うべき音楽は生演奏で、衣装もすべてスペインの職人によるハンドメイドです。私の闘牛士のジャケットは1950年代のホンモノのアンティークですし。一言で、純粋な「ピュア・フラメンコ」と言うべきでしょうか。
――スケーターもスペイン出身にこだわったというのも面白いですね。ハビエルのお姉さんや、同期のスケーター達が集結しました。
フェルナンデス 姉は、僕がスケートを始めたきっかけをくれた人でもあり、もともと表現力豊かなスケーターでした。今回のショーのためにスケーターを集める事になった時、最初に思い浮かんだ1人でした。
――フラメンコとスケートは、身体表現としては逆のタイプだと思います。フラメンコは地面を力強く踏みしめ、スケートはなめらかに滑り移動します。異なる表現を融合させるために工夫したことは?
ナハーロ 2002年に(アイスダンスの)アニシナ&ペーゼラの「フラメンコ」を振り付けた時や、'06年にランビエルの「ポエタ」を作った時も同様でしたが、氷上ではなく、ダンススタジオでの練習からのスタートにこだわって来ました。
最も重視するのは、「フラメンコの重み」と呼んでいる独特の感覚をつかむことです。不動心を持って、大地に身を委ね、勇ましく、凛々しく、しっかり踏ん張る感じ。フラメンコを踊る男女は、大地が僕らへ、そして僕らが大地へ、エネルギーを送り合うような一体感を感じ、それを腕や頭の動き、そして目力で表現します。
ですから今回も、ハビエル達にはまずその感覚を覚えてもらうことに集中しました。重要なのは、彼らが氷の世界に戻っても、地面で掴んだフラメンコの感覚を失わない事です。
フェルナンデス フラメンコ独特の流れ、リズム、世界観などを一体化させるというのは、ダンススタジオでも苦労しましたが、氷上で再現するのはさらに難しいことでした。リンクに降りたら全く別のことをやっているようで、別の動き方を自分の身体に教えないといけないんです。また新しいことをイチからやるのか、と頭を抱えました。