オリンピックへの道BACK NUMBER
羽生結弦がアイスショーで見せた、
精一杯の感謝と確かな回復の証。
posted2019/05/28 18:00
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Asami Enomoto
その姿は、圧倒的だった。
5月24日、千葉県幕張でアイスショー「ファンタジー・オン・アイス」が開幕した。
平昌五輪金メダルのアリーナ・ザギトワ、同大会銀メダルのエフゲニア・メドベデワ、日本からは紀平梨花と宮原知子ら、国内外の錚々たる出演者がそろったショーにあって、その中心にいたのは、羽生結弦だった。
オープニング、他のスケーターたちに続き、エフゲニー・プルシェンコとほぼ同じタイミングでリンクに進み出ると、4回転トウループを跳んだ。
そのシルエットがリンクにかすかに見えたときから起こっていた歓声は、ひと際大きくなった。
オープニングのあと、出演スケーターたちがそれぞれに演技を披露する。
前半と後半それぞれで滑り、スケーティングや振り付けなどで惹きつけたジョニー・ウィアー、スピンやジャンプなど切れのある滑りを見せたステファン・ランビエールらが喝采を浴びる。
さらには競技生活から退いたハビエル・フェルナンデスが、フラメンコの世界で著名なスペイン国立バレエ団芸術監督アントニオ・ナハーロとコラボレーションし、スケートとフラメンコを融合させたナンバーで、場内を沸かせる。
情感のこもった『マスカレイド』。
そんな熱の醒めないショーのトリを飾ったのは、羽生だった。
赤と黒の衣装をまとい、この日、ゲストボーカルとして参加した「X JAPAN」のToshlの歌唱とともに、『マスカレイド』を披露する。
トリプルアクセル、ハイドロブレーディング、イナバウアー……。羽生ならではの持ち味を入れつつ、手袋を仮面に見立ててのしぐさを交えた振り付けをはじめ、情感のこもった世界を展開すると、場内はスタンディングオベーションで称えた。