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結果より内容重視のアルゼンチン。
コパでメッシ頼みを卒業できるか?
text by
藤坂ガルシア千鶴Chizuru de Garcia
photograph byUniphoto Press
posted2019/06/15 12:00
バルサと代表でのタイトル数を比べられるのが“風物詩”となってしまった。メッシは今度こそタイトルを手にできるか。
新監督が来るたびにスタイル変更。
これまで、2004年に就任したホセ・ペケルマンから、アルフィオ・バシーレ(2006-08)、ディエゴ・マラドーナ(2008-2010)、セルヒオ・バティスタ(2010-11)、アレハンドロ・サベーラ(2011-14)、ヘラルド・マルティーノ(2014-16)、エドガルド・バウサ(2016-17)、ホルヘ・サンパオリ(2017-18)と、実に8人もの指導者たちが「メッシを擁したチーム」を率いてタイトル獲得を試みた。
なかでも酷かったのはマルティーノ退任後の目まぐるしい交代劇で、新監督が来るたびにベースとなるプレーのアイデアが変わったため主力選手たちも困惑し、公の場でその不満を漏らすほど。
AFA(アルゼンチンサッカー協会)の組織的崩壊から生じた無秩序は、結果的にロシアW杯予選で最終節まで出場権獲得が危ぶまれ、そのロシアW杯で大会中に指導陣と選手たちの信頼関係が崩れるという最悪の事態を招いてしまった。
堕ちるところまで堕ちたチームが本格的な再出発を図るのが今回のコパ・アメリカであり、そこにタイトル獲得を求めるのはあまりにも苛酷だ。
「格」を示す義務は感じている。
だが、それでもアルゼンチン代表には南米の強国としての誇りがあり、たとえ優勝できなくても「格」を示す義務は選手たち自身も感じている。そこで鍵となるのが「どこまでプレッシャーから解放されるか」だ。
ロシアW杯の前、一部の主力選手たちが「3年連続して決勝で敗れ準優勝に終わったトラウマ」に悩まされる心理状態を率直に語ったが、今回のコパに出場するメッシ、アグエロ、ディマリアらは、まさにその憂悶と闘ってきたレジェンドたちであり、国内の代表番記者たちは「良い結果を得るためには、彼らが背負う見えない重荷を肩から下ろしてあげることが必須条件」と語っている。
そのためか、メンバーによる「優勝候補ではない」「強豪ではない」という言葉をメディアが頻繁に取り上げ、チームに課される優勝へのプレッシャーを少しでも和らげようとする動きが見られる。
こういった傾向が勝利至上主義社会に何らかの影響を及ぼすかどうかは定かではないが、少なくとも選手たちにとっては長年にわたってチームを包み込んでいた「優勝あるのみ」の重い空気を取り除く重要な自己暗示になっているに違いない。