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なぜ日本がボルダリング強豪国に?
秘密は街中のジムの「壁」にあり。 

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森山憲一

森山憲一Kenichi Moriyama

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photograph byRyusuke Fujieda

posted2019/06/16 09:00

なぜ日本がボルダリング強豪国に?秘密は街中のジムの「壁」にあり。<Number Web> photograph by Ryusuke Fujieda

W杯初優勝を果たし、シーズン総合でも3位に入った緒方良行。神奈川大4年のホープだ。

10年間でクライミングジムは5倍以上。

 ところで、なぜ日本人はスポーツクライミングに強いのだろうか。

 重力と戦う競技なので体重の軽いアジア人に向いているという見方もあるが、10年ほど前までは、世界の上位はほぼヨーロッパ勢に独占されていた。日本人の活躍が目立つようになったのは最近の話ともいえるのだ。

 ではなぜ日本人クライマーが急激に躍進したのか。

 その最大要因と見られているのが、クライミングジムの充実だ。

 この10年の間、国内のクライミングジムは一貫して増加を続け、現在は500軒を超える。2008年には100軒に満たなかったのだから、10年で5倍以上になっている。

 が、日本ほどではないにしてもクライミングジムの増加は世界的な傾向なので、このことだけでは日本が強くなった説明としては弱い。

海外との一番の違いはホールドの数。

 国際スポーツクライミング連盟(IFSC)の副会長を務め、世界のクライミング事情に通じている小日向徹は、海外との違いは、ジムの“数”よりもむしろ“質”にありそうだという。

「海外のクライミングジムは、壁に付いているホールドの数が少なくて、ゆとりのあるレイアウトになってることが多いんです。これは初心者にはわかりやすくていいのですが、動きのバリエーションは限られてしまいます。

 日本では、そういうジムもある一方で、壁一面にびっしりホールドを付けるジムも少なくありません。さまざまなホールドを組み合わせて多種多様な動きができるので、これが日本のクライマーの実力アップに相当貢献しているように感じます」

 日本のクライミングジムは一般に狭い。限られたスペースを有効活用するための工夫が、知らず知らずのうちに技術の引き出しを増やす結果につながっているのではないかというのだ。

【次ページ】 初心者が良質な課題にふれられる。

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