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北京五輪4継の日本の“繰り上げ”銀。
原因の選手は「何も話したくない」。
posted2019/05/18 17:00
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph by
AFLO
5月12日。世界リレーが行われた、横浜国際総合競技場。
北京五輪4×100mリレーで銀メダリストの塚原直貴、末續慎吾、高平慎士、朝原宣治は揃いのスーツに身を包み、笑顔で表彰台に上った。
国際陸連のセバスチャン・コー会長から銀メダルを授与されると4人は笑顔で集まった観客に大きく手を振った。
今回の銀メダル授与式は、北京五輪の同レースで1位のジャマイカチームからドーピングで処分された選手が出たためだった。彼らの金メダルが剥奪され、日本は3位から2位に繰り上がった。
末續「自分が走っていた頃から……」
銀メダル授与に先立って4人は記者会見に臨んだ。冗談やちょっと天然な発言もあり、笑いがあふれる会見だった。
だがドーピングに関する質問が飛ぶと、末續慎吾は真剣な表情でアンチ・ドーピングを強く訴え始めた。
「ドーピングというのは、物心がつき、自分が日本代表として走っていた頃から(陸上界には)あった。頭の片隅で、ある程度分かった上で競技をやっていた」と競技人生とドーピング問題について語った後に、こう続けた。
「スポーツにはルールがあり、守らなければいけないものだと思う。スポーツにドーピングがあるのは、(その時点で)スポーツではないと思う。日本人としての思想のなかで、ほかの3人もアンチドーピングの気持ちを持って戦ってきた。それを誇りに思うかは分からない。でも、アンチドーピングの気持ちを持たなければならないし、それによってスポーツが洗練、そして成熟していくと思う」
静かな怒りを感じた。
2008年から11年。ドーピングをした選手がいなければ、彼らはもっと前に銀メダルを手にすることができていたのだから。