オリンピックへの道BACK NUMBER
短距離隆盛の陸上に新たな可能性。
強化が実り始めた4×400の今後。
posted2019/05/21 11:00
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Sho Tamura/AFLO SPORT
5月11日、12日に行なわれた世界リレー。最も注目を集めていた4×100mリレーはバトンミスで失格に終わったが、一方で、4×400mリレーは4位となり、今秋に開催される世界選手権の出場権を獲得した。
初日の予選では組の1位、全体3位で翌日の決勝に進んだ。決勝では、1走のウォルシュ・ジュリアンが流れをつくり、2走の佐藤拳太郎、3走の北谷直輝も4番手でつなぐ。アンカー若林康太はベルギーにかわされて5位でゴール。アメリカが失格し順位が繰り上がっての4位ではあったが、上々、いやそれ以上の好成績と言えるだろう。
「僕らの世代で、復活させたいです」
レース後、ウォルシュがコメントしているが、かつては4×400mリレーこそ、世界上位に食い込んでいたリレー種目だった。
メダルまで0秒09差。
成績がそれを物語っている。1996年のアトランタ五輪では決勝に進出し5位、2004年のアテネ五輪では4位となっている。しかも3位との差は0秒09、メダルまであと一歩に迫っていたのだった。
だが、'08年の北京以降、'16年のリオデジャネイロまで3大会連続で予選敗退。世界選手権でも、'09年に出場権を逃し、連続出場は11回で途絶えた。'17年のロンドン大会では予選2組で登場するも、日本記録から6秒以上遅れる3分7秒29で最下位の8位。しかもバトンを落としたチームにも先着される事態に、走者の1人、金丸祐三は「言葉にならないというのが正直なところです」と失意を隠せなかった。
苦しんできた要因の1つには、400mの選手層が薄いことにあった。
100mでは記録に挑みつつ切磋琢磨する中、さまざまな選手の台頭が見られる。個々に地力をつけ、桐生祥秀やサニブラウン・ハキームといった10秒を切る選手も出現し始めた。
これがリレーでの好成績にもつながっている。