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“日本最速市民ランナー”桃澤大祐。
メッキ担当の会社員が日本選手権へ。

posted2019/05/18 11:00

 
“日本最速市民ランナー”桃澤大祐。メッキ担当の会社員が日本選手権へ。<Number Web> photograph by Keiji Ishikawa

5000mで13分55秒84、1万mで28分25秒56というベストタイムを持つ桃澤大祐。長野のサン工業で働きながら走る市民ランナーだ。

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別府響(文藝春秋)

別府響(文藝春秋)Hibiki Beppu

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Keiji Ishikawa

 陸上競技のトラックシーズンが本格化してきた。

 来年に迫った東京五輪の大舞台に向けて、ひとつひとつの大会が試金石になってくる。ポイントとなる日本選手権は、6月27日から福岡で開催予定だ。

 一方で、長距離種目に関しては五輪をにらんで今年だけ少し変則的な日程が取られている。1万mのみ5月19日に他競技と別日程で開催し、6月の大会では有力ランナーが5000mなどの他種目でも戦えるような配慮がなされているのだ。

 鎧坂哲哉(明治大→旭化成)、田村和希(青学大→住友電工)、相澤晃(東洋大4年)など、箱根駅伝でも名の知られた新旧スターによるハイレベルな対決も見られることだろう。

 さて、そんな日本選手権1万mに、ある“異色”の選手が出場する。

 それが26歳の桃澤大祐(サン工業)だ。

 桃澤は昨年9月の世田谷記録会5000mで13分55秒84という記録をマーク。11月の八王子ロングディスタンスでは1万mでも28分25秒56というタイムを記録し、今年の日本選手権への出場を決めた。これらのタイムはいずれも箱根駅伝に出場するような大学でもエース級の記録だ。

 もちろん桃澤よりも良いタイムをもつ選手も日本には存在する。だが、この記録に数字以上の価値があるのは、桃澤が実業団所属ではない、市民ランナーだからだ。

週末にレース、月曜は溜まった仕事。

 所属するサン工業という会社は、桃澤の地元でもある長野県伊那地方にあるアルミニウムやステンレスへのメッキ技術に特徴がある工業系企業。いわゆる大企業とは趣を異にし、もちろん陸上部も存在しない。桃澤自身も製造課に所属し、日々実際に現場に入ってメッキ処理等を行っている。そんな“一般の市民ランナー”から5000m13分台、1万m28分台というハイレベルな記録が出たことは、多くの関係者に衝撃を与えた。

 当の桃澤自身はこう語る。

「学生時代は雲の上の存在だった選手たちと一緒に走れるのは嬉しいですね。普段はクロカンを中心に地元の伊那で練習していて、週末は関東などのレースにポイント練習の代わりとして出ることが多いです。川内(優輝)さんに似たようなスタイルですね。

 普段の練習はひとりでやることが多いので、練習強度は自分の体調と相談しながらやっています。土日に大会に出る分、月曜日は完休にして、溜まった仕事や雑務を処理するようにしています」

【次ページ】 箱根は走ったが、実業団へは進まず。

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