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北京五輪4継の日本の“繰り上げ”銀。
原因の選手は「何も話したくない」。
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph byAFLO
posted2019/05/18 17:00
世界リレーの会場で、「繰上げ」銀メダルを授与された、(左から)朝原宣治、高平慎士、末續慎吾、塚原直貴。
朝原「最後のチャンスでメダルが取れた」
日本の4選手は、五輪の舞台で銅メダルを受け取っているので、4位から3位に繰り上がった選手とは立場が異なる。
そして朝原が「10年近くリレーを走ってきたが、メダルの壁があった。メダルは不可能だと思ったこともあったけれど、諦めずにやってきて最後のチャンスでメダルがとれた」と話したように、運ではなく実力でとった銅メダルだった。だからこそ、銀メダルに繰り上がった際にも涙がなかったのだと思う。
4人だけではなく補欠としてサポートした選手、そしてスタッフは、悔しさ、複雑な気持ちを抱えながら、違反が発覚してからの3年を過ごしてきたはずだ。涙がなかったことは救いではあったが、心の中で泣いた瞬間はまちがいなくあったのではないだろうか。
末續は「これからは銀メダリストとして生きていく」と話したが、もしあの時に銀メダルを受け取っていたら、彼らの競技人生はどう変わっていただろう。考えると胸が締めつけられる思いだ。
日本陸連は会見の場でアンチドーピングを強く推進していくことを発表した。クリーンな土壌作り、そしてそれを世界に積極的に発信し、これ以上の被害者が増えないように努力してほしい。それを切に願っている。