松岡修造のパラリンピック一直線!BACK NUMBER
ゴールボール・天摩由貴が気づいた
「チームの素晴らしさ」に修造、拍手!
text by
松岡修造Shuzo Matsuoka
photograph byYuki Suenaga
posted2019/05/19 09:00
修造さん、天摩さんと、日本ゴールボール協会の増田徹理事。
修造だからこそ語れる「緊張」。
そう言うと、天摩さんはためらいがちに悩みを打ち明けた。かつてテニスプレイヤーとして世界の強豪相手に戦い、ウィンブルドンベスト8など輝かしい結果を残してきた松岡さんだからこそ聞きたいことがあるという。
天摩 松岡さんも、試合中に緊張することはありましたか。
松岡 もちろんです。試合中は緊張するし、本来できるはずのことができないことだって多々ありました。
天摩 そういう中でどうやって自分のパフォーマンスを発揮してきたのか。心がけていたことはありますか。
松岡 簡潔に言えば、(シャツの左胸を指さして)このシャツにも書いてあることなんですけど、「できる!」と信じることです。
天摩 できる(笑)。
「自分はできる」と言い聞かせて。
松岡 試合が始まると、「オレにはできないんじゃないか」ってマイナスの気持ちが急にやってくるんですよ。僕も負けず嫌いだけど、どんどん負の感情が湧いてくる。それを退けるために、僕はメンタルトレーニングをすごく勉強したんです。
ヨーロッパやアメリカ、そして日本、現地で試合するたびにその土地土地のやり方を全部吸収していった。そして……全部合わなかったんです。個人に合うやり方なんて人それぞれだから、何が自分に合うのかを修造流に工夫していったんです。それが今、僕の代名詞にもなっている「崖っぷち大好き」とか「失敗しても全然OK」とか、自分を前向きにさせてくれる言葉。あれは全部自分に向けて言った言葉なんです。
天摩 なるほど……。「自分はできる」と言い聞かせたんですね。
松岡 ひと言で言うと、自分を受け入れることが前に進む原動力になるんだと思います。弱いことは悪いことじゃない。緊張するのも勝ちたいからこそ出てくる感情でしょ。良い成績を残したいから、チームを勝たせたいから、だからこそ生まれる感情であって、それはむしろ由貴さんの武器だと思いますよ。
天摩 そうですね。以前からトレーナーの方にも、緊張することや不安に思うことは悪いことではないと言われていて、自分でもそう思うようにしていたんです。でも、試合になると固くなってうまくボールが投げられなかったり、自分はできないんじゃないかと思ってしまう。それでこの前言われたのが、「力持ちになりなさい」と。緊張も不安も恐怖もぜんぶ自分で抱えて、それでも自分の力を発揮できる、そういう力を身につけなさいと。
松岡 それは面白い表現ですね。