松岡修造のパラリンピック一直線!BACK NUMBER
ゴールボール・天摩由貴が気づいた
「チームの素晴らしさ」に修造、拍手!
text by
松岡修造Shuzo Matsuoka
photograph byYuki Suenaga
posted2019/05/19 09:00
修造さん、天摩さんと、日本ゴールボール協会の増田徹理事。
緊張をリュックサックに喩えると。
天摩 そういった負の要素を抱えながらでも動ける力持ちになればいいと言われて、自分の中でもなるほどと思ったんです。今までは緊張する自分をどうにか改善しようとやってきたんですけど、それは10あるマイナス要素を4や5に軽減させようとする作業なんです。
そうではなくて、10のマイナスをぜんぶ持ってやれば良いんだと気づかされて、自分もまだ変われるかもしれないと思ったのがつい最近のことです。
松岡 それは素晴らしいですよ。
天摩 そういうことがあったので、松岡さんにも試合の時とかに心がけていることがあったのかなと思って聞いてみました。
松岡 例えばですけど、緊張をリュックサックに喩えると、これを重くするか軽くするかは自分次第なんです。でも、プレッシャーは違う。それは人が作るものだから。勝ってくれとか、ここで決めろとか、他人の期待をコントロールすることはできないじゃないですか。だから、プレッシャーを感じられる人って、僕からすればむしろ羨ましい人です。
天摩 なるほど。
弱い自分と何度も会話していく。
松岡 それに比べて、緊張は自分が創り出すものだから、いくらでも会話できる。僕の解決方法は瞑想でした。
天摩 瞑想?
松岡 神社や色んなところで毎日30分は必ず瞑想していた時期があるんです。瞑想の何が良いかって、瞑想しているときってじつはむちゃくちゃ色んなことを考えるんです。弱い自分もたくさん出てくる。でもずっと瞑想を繰り返していると、それを受け入れて、また無にする力が身につくんですね。
最初は弱い自分と何度も会話していくんですけど、そのうち会話を繰り返したところで答えなんてないじゃんという結論に達するんです。弱い心と会話しても、答えがないという結論にたどり着いた。そこからはもう、弱い自分が出てきても「はい、サヨナラー」って。自然と受け流す力を、僕は瞑想で養いました。
天摩 じゃあ、それを身につけたことによって、自身のプレーは変わりましたか。
松岡 変わっていたら、世界のトップにいったでしょうね(笑)。ただ僕の場合は、本当にセンスがないと言われた中で、ケガもあってね、それなりに日本選手の中では頑張った方だと捉えられてはいるはずですよ。メンタルが弱かったからこそ、それを最後は武器にすることができた。由貴さんもきっと自分なりの方法で乗り越えられるはずです。