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苦しい立場のアルバルクが連覇達成。
BリーグCSが物語る日本バスケの成長。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byKiichi Matsumoto
posted2019/05/13 18:00
連覇を達成し喜びを交わす田中(左)とルカHC。田中は3本の3ポイントを含むチーム首位の16得点。
沖縄、新潟、さらに過密な日程。
それだけではない。
アルバルクはプレーオフにあたるチャンピオンシップ(CS)のクォーターファイナルを新潟で、セミファイナルを沖縄で、共にアウェーの地で戦わねばならなかった。東京からの移動があり、現地ではストレスがたまりがちなホテルでの生活を強いられた。
そして、追い打ちをかけるように思われたのが試合日程だ。琉球ゴールデンキングスとの準決勝は、1勝1敗でGAME3までもつれ込んでいたのだが、最終戦が行なわれたのはGAME2の翌日の休息日をはさんだ後の、5月7日の火曜日の夜だった。彼らが東京に戻って来られたのは5月8日の水曜日、ファイナルの行なわれる3日前だった。
対するジェッツの面々は、普段のホームゲームと同じようにクォーターファイナルもセミファイナルも自宅から本拠地・船橋アリーナに通い、セミファイナルを2連勝で終え、5月6日の月曜日からファイナルへの準備を始めていた。
両チームの間には、シーズン中の成績、ファイナルへの準備期間、休息日数にかくも大きな差があった。
しかし、そんな条件が、大方の予想とは正反対に作用することがある。それがスポーツの面白さでもある。
ルカHCが見出していた勝算。
CS出場チームには、若手といわれる40代前後のヘッドコーチ(HC)も多かった。一方、アルバルクを率いるのは、50歳と経験豊富なルカ・パヴィチェビッチである。1勝1敗で迎えた琉球とのGAME3を前にして、百戦錬磨の指揮官は選手たちにこう話したという。
「もし、我々がこのゲームに勝てれば、そのときには、この試合がファイナルへ向けた良い材料、テスト、練習となる。だから、チーム全体でベストなパフォーマンスでプレーをして乗り越えるんだ!」
ルカの愛称で知られるHCは、ファイナルを目前にし、ともすれば大きなハンデとなる試合日程に無限の可能性を見出していた。
1つが、練習では決して得ることのできない、苦しい試合を乗り切ることによって得られる選手たちの成長と、チームの一体感の醸成だ。