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ペップの食事改善がメッシを変えた。
故障しがちのデンベレが学ぶべき教訓。
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph byGetty Images
posted2019/05/10 11:00
セルタ戦では開始わずか4分で負傷交代したデンベレ。今季4度目の長期離脱を強いられることになった。
ペップが持ち込んだ栄養学。
バルサには前例がある。
2004年10月、トップチームで公式戦デビューを果たしたメッシは、2005-06シーズンから2007-08シーズンにかけて大腿部の裏側を4度負傷し、計143日間ピッチを離れた。大腿部にある筋肉は主に足の伸長や膝の屈伸を司り、メッシやデンベレの特長である爆発的な加速に深く関わっている。
ところが、2008-09シーズンから2011-12シーズンまでのメッシの怪我は悪質なタックルによる足首の捻挫(全治7日)ひとつしかない。
2008年6月からチームを率いたグアルディオラの徹底的なコンディション管理が功を奏したからで、なかでも効果があったのが食事改善だった。
グアルディオラが目を光らせるようになるまで、バルサでは食事はすべて選手任せだった。それまで栄養とパフォーマンスの関係に留意した監督はおらず、朝の練習前のロッカールームにはドーナツやクロワッサンが用意されていた。ライカールト時代の練習後には、食事を抜きがちな選手のためにピザを注文する習慣まで生まれたという。「これなら食べるだろう」と気を利かせた者が、チームの周辺にいたらしい。
そんなところに、グアルディオラは栄養学を持ち込んだ。
そして、それまで何も考えることなくチョコレートや甘いケーキ、炭酸飲料に手を伸ばしていたメッシに果物を摂らせ、好んで食べていた肉の代わりに魚を与えた。ところが、メッシはグアルディオラが去った後の2012-13シーズンから2013-14シーズンにかけても大腿部を6度痛めている。
自ら栄養士を呼んだメッシ。
このときは自らイタリアの栄養士ジュリアーノ・ポセールとコンタクトをとり、食生活の再改善に取り組んだ。砂糖は極力避け、野菜・果物は有機栽培された旬のものを選び、魚は鮮度に気をつけ、全粒穀物や良質のオリーブオイル、ドライフルーツ、卵を積極的に食べる――。
結果は大きな怪我の激減と、年齢を重ねても陰りは見られないパフォーマンスである。