酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
宮西尚生の300ホールドは世界一?
実は日米で違う「中継ぎ」の地位。
posted2019/05/08 17:00
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph by
Kyodo News
平成が終わって令和の時代に入った。新しい時代、野球はまた変化するだろう。
プロ野球が大人気だった昭和の時代、一般企業では社員を野球選手にたとえたものだ。「やつは売上1位、うちの部の4番打者だな」とか「彼は課長だけど、まだ得意先も持っている。ユーティリティプレイヤーだ」などなど。
令和の時代には通用しなくなるかもしれないが、そういうたとえで言うなら、中継ぎ投手は小回りの利くマメな営業マンか。
「彼は小口の得意先でも嫌がらずに毎日のように得意先回りをするから評判がいい。有休もとらないしね」
「でも、毎日早く帰ってるけど、大口をしっかりつかんでるあいつのほうが出世するんだなあ」
後者が先発投手だ。
救援投手は、過酷な持ち場の割りに報われない。最多勝のタイトルにも無縁だし、規定投球回数に達しないので防御率も評価されない。沢村賞の候補にもならない。
それでもクローザーには「セーブ」という評価基準があるが、中継ぎ、セットアッパーは何にもご褒美がない時代が長かった。
中継ぎ投手を評価する指標として1986年にMLBで「ホールド」という指標が考案され、NPBでもようやく2005年から導入されるようになった。
宮西、山口、浅尾の名中継ぎ。
導入されて15シーズン目の今年、日本ハムの宮西尚生が通算300ホールドを記録した。
<5月7日現在のNPBホールド数歴代5傑。カッコ内は実働期間、チーム名があるのは現役>
1.宮西尚生 305ホールド(2008-日本ハム)643登板
2.山口鉄也 273ホールド(2007-2017)642登板
3.浅尾拓也 200ホールド(2007-2018)416登板
4.マシソン 166ホールド(2012-巨人)393登板
5.五十嵐亮太 159ホールド(1999-ヤクルト)791登板
私は200ホールド以上を挙げた宮西、山口鉄、浅尾の3人を「セットアッパー3傑」と呼んでいる。
宮西は2007年大学社会人3巡目、山口は米マイナーリーグを経て2005年育成1巡目、浅尾は2006年大学社会人3巡目と、3人とも叩き上げと言える。
いずれも入団時にまぶしいスポットライトを浴びたわけではなく、キャンプ、オープン戦を通じて指導者の信頼を得て、マウンドに上がるようになった。
そして、中継ぎという「いつエマージェンシーコールがあるかわからない」持ち場でひたすら待機し、出撃してきたのだ。