“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
大怪我を克服した「ヒガシのクリロナ」。
神戸FW増山が覚えた身体の使い方。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2019/04/28 07:00
大怪我から復帰を果たしたFW増山朝陽。躍動感あるドリブルを、プロのピッチでも見せることができるか。
復帰した'18年、まさかの悲劇が。
'18年、横浜FCでの1年間を終えて、神戸に復帰すると、身体をコントロールするトレーニングを取り入れるなど、自らの身体と向き合った。徐々にコンディションが上がっていった増山は、早速、夏にブレイクの兆しを見せた。
J1第18節の柏レイソル戦。右サイドハーフでスタメン出場のチャンスを得た増山は、東福岡時代を彷彿させる躍動感あるプレーで幾度もチャンスをつくり出した。当然、高校時代よりも進化をしており、うまく周りを使いながら、要所でバネを生かした弾丸ドリブルを披露し、効果的なプレーを見せていた。中でもイニエスタとの連係は抜群だった。鋭い動き出しでパスを引き出すなど、神戸に新たな可能性を生み出した、まさに出色の出来だった。
この試合でリーグ2年ぶりのゴールを挙げて、1-0の勝利に貢献すると、そこから3試合連続でスタメン出場を果たした。だが、その3試合目のFC東京戦で悪夢が待っていた。
前半、シュートの際に右膝前十字靭帯損傷の大けがを負った。全治8カ月の長期離脱を強いられることとなってしまったのだ。サッカー選手に多いといわれる怪我ではあるが、増山の場合は、珍しい形で引き起こしたものだった。
「この怪我も空振りからなんです。空振りで断裂する選手はいないらしいです」
増山が振り返ったように、左足でシュートを打ちにいった際、踏み込んだ右足の前十字靭帯が悲鳴を上げたのだった。
「振る足の力が強すぎて、軸足での姿勢を制御ができなかった可能性はあると思います。裏を返せば、それだけトップスピードでシュートフォームに入り、強烈なスイングで軸足を置いてのシュートだからこそ、負荷がかかった。これも身体能力が高い選手にはあり得ることだと思います」(袖野)
2つの怪我を無駄にしないために。
皮肉にもこの2つの大怪我は、彼のずば抜けた身体能力を示すものとなった。だが、この2つを経験したからこそ、自分の身体により真剣に目を向け、イチからの身体づくりに取り組むことができた。
「珍しい2つの怪我をしてしまうくらい、僕の身体にはバネがあるということなので、それを生かせる身体づくりをしないといけないと痛感しました。いつも『身体がキレているな』と感じる時や、調子がいい時に、普段の身体の動き以上のことをやってしまって、怪我をしてしまっている。今は膝周りの筋肉の補強や神経系のトレーニング、バランス系のトレーニングを神戸のトレーナーとずっとやってきた。徐々に馴染んできて、身体がキレ出しているのは感じます」