話が終わったらボールを蹴ろうBACK NUMBER
「強くていやらしい鹿島」はどこへ。
内田篤人の不在が響く勝負勘の乱調。
posted2019/04/29 16:30
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph by
Getty Images
鹿島サポーターからのブーイングが止まらない。
平成時代最後のリーグ戦、鹿島アントラーズは横浜F・マリノスに2-1の逆転負けを喫して5位から9位に順位を落とし、首位FC東京との勝ち点差を9に広げられた。
それにしても、スコア以上に内容に大きな差があった。
シュート数はF・マリノス16本に対して鹿島は5本。鹿島が良かったのは先制点を奪った一瞬だけ。何度かカウンターを仕掛けるも精度を欠き、ゴールを奪えない。F・マリノスの攻撃に対応するのに体力を奪われ、後半はほぼ自陣での試合になった。
強く、いやらしい鹿島はどこに行ったのか――。
「相手を引きこんで守って、カウンターで点を取るのが今日の狙いでした」
右サイドバックとして出場し、キャプテンマークを巻いた永木亮太は、そう言った。
重心を低くした守備ブロックを敷いて自分たちの前に餌をまき、相手を引き込んでボールを奪い、カウンターで仕留める。それはF・マリノスのようなチームと対峙するには理にかなった戦術だった。
安西の先制点、鹿島ペースかと思いきや……。
実際、前半はこの戦術がうまくハマっていた。
前半11分にカウンターから安西幸輝がゴールを決め、先制点を奪って優位に展開していたのだ。
強い鹿島を知る人であれば、これで完全に鹿島ペース、いや鹿島の勝利だとさえったはずだ。1-0になってからの戦い方が鹿島は抜群にうまい。相手の攻めをいなし、時には泥臭く守って勝ち点3を手にする。圧倒的な勝ち方ではないが、そうしてのらりくらり勝っていくところに鹿島の強さがあった。
ところがF・マリノス戦は、1点リードをしているのに余裕が感じられなかった。1-0からの試合の進め方がチームの中でいまひとつ徹底されていなかったのだ。