炎の一筆入魂BACK NUMBER
カープの「幹」を担う重責に抗って。
誠也が復帰、あとは田中広輔だけだ。
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byKyodo News
posted2019/04/29 11:30
28日ヤクルト戦でスタメン復帰した鈴木誠也。頼れる主砲がさらにチームを勢いづけるはずだ。
「タナキク、誠也、會澤の4人」
「幹がしっかりしていれば……」。それは今年のチームの姿と重なる。
広島が8連勝で借金を完済した27日。チームをけん引したのは、節目の1000安打を含む3安打の2番菊池涼介であり、3戦連続0封を支え9回のだめ押し打を放った會澤翼だった。
主力が幹になることでチームに安定感を与え、快進撃を支えた。3、4月で8以上の借金を抱えた球団が、4月中に完済したのは史上初のことだという。
「選手でチームの勝敗の責任を取れるのはレギュラーしかいない。いまのうちでいえばタナキク、誠也、會澤の4人」と東出打撃コーチはいう。
打撃不調が続く、田中広輔。
ただ1人、1番田中広輔が取り残されている。スターティングメンバーの中でともる、1割台の打率が寂しい。出塁率も3割を切り、開幕直後は発揮していた相手投手に球数を投げさせる粘り強さも薄れてきたように感じる。
守備で抜群の安定感があるためスタメンから外すことはできなくとも、打順降格や、更新し続けている連続フルイニング出場のストップすら頭をよぎる。しかし、「外すのは簡単」と東出打撃コーチはいう。それでも「ただ」と付け加え、指揮官の思いを代弁するように言葉をつむぐ。
「ここで広輔がどうするか。一番悔しいのは本人だし、つらいのも本人だから。監督も現役時代に主力としてプレーしてきた選手だから、主力としての役割を分かっている。ここを抜け出せば、また違う広輔が見られると思っている」
記録ストップがモチベーション低下になると見る向きもあるが、首脳陣が持っているのは、記録に気を遣った采配という周囲の見方とは真逆の思いだ。使い続けることは、優しさではなく、厳しさなのだ。
本人も分かっている。試合前の打撃練習では、昨年までのチームメートだった丸佳浩のようにグリップを大きくヒッチするタイミングの取り方を試すなど試行錯誤を続ける。「いろいろやっていかないといけないので」。懸命に、もがいている。