炎の一筆入魂BACK NUMBER
カープの「幹」を担う重責に抗って。
誠也が復帰、あとは田中広輔だけだ。
posted2019/04/29 11:30
text by
前原淳Jun Maehara
photograph by
Kyodo News
4月27日、神宮。6日ぶりに実戦の打席に立った鈴木誠也は、右肘でリズムをとりながら相手投手と対峙した。
これまでの打撃フォームとは明らかに、違う。背筋を伸ばし、右脇を大きく開けて構える形は、元マリナーズのケン・グリフィーJr.のようだった。
コンディション不良で3試合欠場し、21日DeNA戦以来4試合ぶりの代打での出場だった。6日ぶりの打席で、打撃フォームを変える大胆な行動に出た。
「シーズン中だからです。(ケン・グリフィーJr.を)真似したわけじゃないですけど、ヒントになるかなと思って」
模倣は否定するも、フォームを変えたことはあっさり認めた。これまでも、鈴木は突然フォームを変えることがあった。昨年は両脚の幅を狭めグリップを右肩前に据えるタイガースのミゲル・カブレラやグリップ位置を上げるエンゼルスのマイク・トラウトのような打撃フォームにしたこともあった。
シーズン中のフォーム調整。
微修正はあっても、シーズン中に打撃フォームを大胆に変えることはリスクを伴うようにも感じる。打者の中には、日々の振り込みでそのシーズンのフォームを体に染みこませる選手もいる。探求心が強い鈴木は、百面相のように形を変える。ただ、そこには明確な狙いと意図がある。だからこそ自分自身を見失うことはない。
スタメン復帰した翌28日は、見た目にはこれまでの打撃フォームに戻っていた。ただ前日の試みで感覚が変わったのだろう。1週間ぶりのスタメン出場で見事に3安打、猛打賞を記録してみせたのだった。
東出輝裕打撃コーチは鈴木の狙いを解説してくれた。「変わっているのは枝葉の部分。(打撃の)幹がしっかりしているからできる。根本的なものは変わっていない」