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「56kg対110kg」が女子柔道で実現。
中村美里、皇后杯での挑戦と未来。
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byAFLO
posted2019/05/06 11:00
中村(左)は体重差50kg以上の児玉を相手に巧みな組み手と鋭い足技で戦うも指導を2つ受け延長戦へ、最後は払い腰で優勢負けを喫した。
小さくても大きな人に対抗できる。
「最初の指導は想定外だったけど、2つ目を取られても焦りはなかったです。ただ、体重が倍くらいというのは想定していたけれど、想像以上に大きかった。
組み手で相手を翻弄して技を仕掛けていくつもりだったのですが、大きさがある分、リーチもあって、なかなか自分の組み手ができませんでした。それでも途中からは徐々に自分の柔道ができて、小さくても大きな人に対抗できるというのを少しは見せられたんじゃないかなと思います」
そして児玉に対して、「超級で全日本選抜体重別選手権に出ている強い選手と当たることができて本当に良かったです」と感謝した(※児玉の最終結果は5位=ベスト8)。
皇后杯はあこがれの大会だった。最初に出るチャンスを得たのは'09年世界選手権で初優勝を飾ったとき。規定により翌年の皇后杯の推薦枠出場権が付与された。しかし、当時は52kg級の日本代表として果たさなければならない役割が大きく、ケガのリスクがあるということで出場を回避した。
「自分は出る気満々でした。その頃から出たいという気持ちを持ち始めていたのと、女子の日本一を決める大会ということにあこがれがありました」
連覇した素根輝の心にも響いた。
一度は断念したあこがれの舞台に立つ道が見えたのは、'16年リオデジャネイロ五輪で銅メダルを獲って、休養に入っていた時期だ。'17年4月に筑波大大学院に進学した中村は、それまでとは違った取り組みをしている中で皇后杯への思いを再燃させ、今大会の予選となる今年3月の東京都選手権で勝ち上がり、出場権を獲得した。
小さな体で果敢に相手に立ち向かう姿は、今大会で連覇を果たした18歳の素根輝(環太平洋大)の心にも響いた。
会場の袖で中村の試合に視線を送っていた素根は「小さい頃から中村美里選手がすごく大好きで、今でも憧れています。小さい体でも大きい相手に立ち向かっていく姿。自分も重量級では小さい方なので、見習っていきたいです」と思いを馳せた。