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「56kg対110kg」が女子柔道で実現。
中村美里、皇后杯での挑戦と未来。
posted2019/05/06 11:00
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph by
AFLO
4月21日に行なわれた柔道の全日本女子選手権(皇后杯)は、1人の女性柔道家の生き方を示す大会でもあった。
女子52kg級で3回の世界選手権制覇、3度の五輪出場、五輪での銅メダル2つという輝かしい実績を残してきた中村美里(三井住友海上火災保険)が29歳にして初出場。体重無差別で争う大会で「小よく大を制す」と全力を振り絞り、会場から大きな声援を浴びた。
「皇后杯出場は、オリンピックの金メダルと同じぐらい、夢でした。出られてうれしかったです」
初戦(2回戦)で敗れはしたが、関係者に握手でねぎらわれて頬をゆるませた。清々しい空気が漂っていた。
相手の児玉ひかる(東海大1年)は体重別の大会では78kg超級の選手で、今大会のエントリー体重は110kg。57kgの中村の2倍ある。身長も児玉が173cm、中村157cmと、15cmの差。そして、昨年の世界ジュニア選手権78kg超級金メダルという実績を持つ伸び盛りのホープだ。
組み手がままならなくても工夫。
試合開始。体重差うんぬんの前に、リーチの違いから組み手がままならない中村は、開始1分過ぎのところで指導を受け、その約40秒後には2つ目の指導を受けた。けれども、冷静さを失うことはなかった。
「組み手が不利になったところからの打開策や、組み手が良ければ崩すことを考えてやりました。巴投げからの関節技や、巴投げでは少し浮かせられたらと考えていました」
そう語ったように、さまざまな工夫で立ち向かった。小さな中村が児玉の下にまわって巴投げを掛けようと挑むときには、とりわけ大きな声援が響いた。
試合はゴールデンスコアの延長まで持ち込まれ、なおも熱戦が続く。すると5分12秒には相手に指導。中村の攻めが効いている。最後は6分13秒に払い腰で有効を奪われて敗れたが、その奮闘ぶりは多くのファンの目に焼き付いた。