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日本サッカーはあの“14秒”を思い出せ。
欠ける批判精神と「逃げる」文化。
text by
熊崎敬Takashi Kumazaki
photograph byJ.LEAGUE
posted2019/05/03 11:30
J1第7節、FC東京vs.鹿島アントラーズの得点シーンでロストフでの“苦い”シーンを思い出した。
東京vs.鹿島戦の失点シーン。
J1第7節、東京がホームで鹿島を3-1で破った一戦。その3点目となる、ディエゴ・オリヴェイラが決めたゴールについてだ。
ゴールシーンを端的に振り返る。
自陣深いところで東京はボールを奪い、久保建英が器用なタッチで前線に浮き球を送る。このボールの落下点には鹿島の犬飼智也がいたが、なぜか空振り。こぼれ球を回収したディエゴが、センターサークルから一気にドリブルを仕掛ける。
ディエゴは飛び込んできた町田浩樹を一発でかわし、ひとり旅になり、鹿島GK曽ヶ端準との1対1を落ち着いて決めた。
空振りも論外だが、この流れの中でまずかったのが町田の対応。自分の背後にはキーパーしかいないのに、十分の体勢でドリブルを仕掛けてきた敵に一発で飛び込んでしまっている。無防備きわまりない。
このとき町田がやるべきことは、飛び込むことではなく下がることだった。ディエゴとの間合いを一定に保ちながら、ペナルティエリア付近に下がっていき、その間に味方の援軍を待つのだ。
ディエゴは単独、反対にディエゴのすぐ後ろには鹿島の選手がふたりいた。しっかりと下がっていれば、やがて状況は3対1になる。それがわかっているはずなのに、町田は飛び込み、ばっさり斬られた。これは技術ではなく、状況判断のミスだろう。
思い出した、あの「14秒」
このシーンを見て、脳裏に甦ったゴールがある。ロシア・ワールドカップ、ベルギー戦の決勝点。いわゆる「ロストフの14秒」だ。
ワールドカップ敗退につながる失点となっただけに、このゴールにはさすがに「ちょっと待った!」の声が無数に挙がった。批判の声の多くは、ドリブルで仕掛けるデブライネに対面しながら、下がろうとしなかった山口蛍の対応に向けられた。
もちろん、この失点は山口の責任ではない。
デブライネが仕掛けてきた時点で、日本はすでに大崩れしていて、仮に山口がうまく下がったとしても失点は避けられなかった可能性が高い。
だがその一方で、山口が最善の対応をしたかといえば疑問符がつく。