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日本サッカーはあの“14秒”を思い出せ。
欠ける批判精神と「逃げる」文化。
text by
熊崎敬Takashi Kumazaki
photograph byJ.LEAGUE
posted2019/05/03 11:30
J1第7節、FC東京vs.鹿島アントラーズの得点シーンでロストフでの“苦い”シーンを思い出した。
イタリアでは「逃げる」と表現。
ここで大切なことは、日本にはまだ下がるという対応が浸透していないということだろう。ロストフの14秒では珍しく議論が沸騰し、下がることの重要性を指摘する声も上がっていたが、Jリーグではひどいミスが繰り返されている。
ちなみにイタリアでは、いままで私が「下がる」と書いてきた対応を「逃げる」と表現する。
スピードに乗ってドリブルを仕掛けてきた敵に、一発で飛び込むのは愚の骨頂。「逃げるが勝ち」が少年サッカーの間でも浸透している。敵を遅らせながら援軍の到着まで持ちこたえるのが、優秀なディフェンダーの条件とされる。
残念ながら日本では、こうした対応が徹底されていない。むしろ育成の現場では、勇敢なタックルを推奨する指導者も少なくない。それは攻撃側の質が低く、無謀なタックルが致命傷になるどころか、ボールを奪えるケースが多いからだ。町田も過去の成功体験から、あの場面で飛び込んでしまったのかもしれない。
やってしまった失敗は取り返せない。だが、町田にはこの失敗を糧にして、「煮ても焼いても食えない」厄介なディフェンダーになってほしい。