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結局、Jとブンデスは何が違うのか。
伝統、野心、ジェンダーまで影響?
text by
杉山孝Takashi Sugiyama
photograph byAFLO
posted2019/05/03 17:00
ブンデス2部の舞台でサポーターとともに“闘い”続ける酒井高徳。ハンブルガーSVは現在、昇格争いの渦中にいる。
“2部9位”の金曜試合に、1万3157人。
驚きが増すのは、残り10試合となっていたこの時点で、ボーフムが9位だったからだ。迎えるハイデンハイムは6位だが、間には勝ち点8の差があり、いきり立つような相手でもない。1部16位とのプレーオフに出場できる3位に至っては、13ポイントの彼方にかすんでいた。
そんな寒い2部リーグの金曜18時半、1万3157人が集った。
32ページからなるタブロイド判のマッチデイ・プログラムには、選手どころか相手チームの地元紙記者のインタビューまで載っている。スクールからU-19まで下部組織の活動も網羅し、次節戦うビーレフェルトの情報までもご丁寧に紹介されていた。
ピッチ上のプレーも、スタンドの熱に比例した。パスもランニングもスピードがあり、幅広く、そしてゴールへ向かう。1対1の場面では激しく、賢い戦いが繰り広げられていた。
「闘い」の色合いが強いブンデス2部。
同じ節でも昇格争い真っただ中で、当時4位だったザンクトパウリとのダービーを戦い終えたハンブルガーSVの酒井高徳は、1部との違いをこう話した。
「2部は闘いの部分が強調されます。自分たちが弱者だと理解して、攻撃であれ守備であれ、そのやり方に忠誠を誓うのが、2部のサッカー。泥臭くても格好悪くても、目の前の敵だけは絶対に止める。あるいは抜いてやるぞとか、勝ってやるぞという戦いが、非常に得意なんです。質の部分で1部に少し足りていない部分もあるけれど、ずっとやり続けられるのが2部の良さだと言えると思います」
第30節時点で首位に立つケルンは、その象徴と言えるかもしれない。
堅守と、速攻を引っ張るジモン・テロッデとジョン・コルドバの2トップが、圧倒的な得失点差を築き上げている。決して華やかなサッカーではないが、ホームゲームではほぼ毎試合、5万人近いファンがスタンドを埋める。
追うハンブルガーSVはクラブ史上初めて2部を戦う“新人”ゆえか、質を伴った「自分たちのサッカー」にこだわる。5月19日の最終節が近づく中、ダービー後は5試合連続で勝利から見放されるなど、混戦が続く昇格レースで少し焦りを増している。