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湘南の会長が語る「Jリーグと平成」。
クラブが個性を出す本質的な意味とは。
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byGetty Images
posted2019/04/30 11:05
湘南は若い選手が育つ場所、というイメージは確立された。それはもはやチームのDNAになっている。
いまのJリーグが、本当に理想の形なのか。
──Jリーグ全体を見渡しても、令和の時代は海外移籍がさらに活発になっていく、しかも平成の時代より若い年齢の選手の移籍が多くなると思われます。そのなかで、Jリーグはどうやって価値を維持し、向上していくべきでしょうか?
「僕らが子どもの頃は、プロ野球を観ながら『あのピッチャー、また内角に投げているよ』といったようなことを話したものです。野球になじんでいる子どもたちが多かったので、ちょっと専門的な会話も成立した。Jリーグを観て育った平成生まれの子どもたちは、『あのディフェンスはないよな』とサッカーで同じような話をしますよね。
しかも彼らは、バルセロナもマンチェスター・シティもドルトムントも観ていて、それぞれのサッカーの違いを分かっていて、どこが好きかと話をする。でも、Jリーグのクラブの違いを分かっていて、どこが好きかという会話を聞きますか?」
──あまり聞かないですね。海外サッカーのほうが盛り上がる傾向は強いと感じます。
「それはたぶん、Jリーグはクラブの色が薄いからだと僕は考えます。たとえばですが、中盤でボールをつながずにひたすら前線に放り込むチームがあってもいいのでは。それだって個性ですから。プロサッカークラブなので、経営の軸足は勝つことに置かれる。だとしても、優勝できるのは1チームだけです。勝てなかったときにどんな価値を提供できるかという意味で、それぞれのクラブが色を出していくのは大事ではと感じます」
──色のあるチーム同士の対戦は、観ていて面白いですよね。
「ダゾーンとの大型契約を結んだことで、Jリーグ全体としてうまくいっているように映るかもしれません。個人的にはダゾーンとの契約がある2026年までの間に、そのお金を有効に使っていくべきだと思います。日本人選手の海外移籍は、『国際社会における交流及び親善への貢献』というJリーグの理念に照らしても、令和の時代ではさらに活発になっていくべきものでしょう。
そのうえでJリーグが安定的に繁栄していくためには、そこで行われているサッカーが面白くなければお客さんは増えない。平成が幕を閉じるいまのJリーグは、本当に面白いと言えるのか。『日本サッカーの水準向上及びサッカーの普及促進』というJリーグの理念に立ち返って、もう一度本質的な部分を議論していくべきではないかと思います」