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湘南の会長が語る「Jリーグと平成」。
クラブが個性を出す本質的な意味とは。
posted2019/04/30 11:05
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph by
Getty Images
湘南ベルマーレの眞壁潔会長のインタビュー第2回は、トップチームの在り方からJリーグの未来図へ話題を広げていった。
2012年に就任した曹貴裁監督のもとで、ベルマーレは“ノンストップ・フットボール”と呼ばれるサッカーを築き上げた。観るものを飽きさせない彼らのサッカーは、観衆だけでなくJリーガーをも惹きつける。「ベルマーレでプレーしたい」と思わせるクラブになっているのだ。
他クラブと一線を画すスタイルの構築は、Jリーグはもちろん日本サッカーが進むべき未来をも映し出していると言っていい。
──昨シーズンは湘南ベルマーレとして初めてのタイトルを獲得しました。ルヴァンカップ優勝の意味をどのように考えますか?
「お金はなくても時間だけは平等にあって、大企業がバックアップするクラブを下してタイトルを取った実例が生まれれば、いま何とか踏ん張っているJ2やJ3のクラブにも光が差す。小さなことからコツコツとやっていけば、時間はかかっても結果を残せるんだ、という実例を提示できたのでは。それは、Jリーグの価値を高めることにもなったはずです」
──第2のベルマーレを目ざすクラブが、出てくるでしょうね。
「かつての僕がJリーグの理念や百年構想を営業材料としたように、『湘南ベルマーレというクラブがあって……』という実例として使ってもらえる。百年構想をなぞりながら階段を上がってのルヴァンカップ獲得によって、お金は使いようだ、選手は育てようだ、クラブを強くする方法は選手の移籍だけじゃない、ということを示せた気がします。
日本サッカーがまだ発展途上にあるなかで言うと、我々のようなやり方もあるんだということを証明できたのは大きい。それはもちろん、監督以下スタッフと選手たちが頑張ったからですけどね」
──全員が攻守にハードワークするスタイルも、ベルマーレ独自の個性としてすっかり認知されました。
「我々のホームタウンから、遠方のクラブの育成組織に通っている子どもたちがいます。一時期に比べればずいぶんと減った印象はありますが、『ビッグクラブでやりたい』という子どもたちはまだまだいるでしょう。
ただ、子どもたちは勉強もしなければいけないわけで、彼らのためにもご家族のためにも、本当のところを言えば地元でサッカーをやってもらったほうがいい。そういうクラブにならなければいけないと考えてきたなかで、ノンストップ・フットボールは『世界のサッカーは走っているし、球際も激しい、それなら、足が止まるまでやってみよう』という分かりやすい論理からスタートした。
接触プレーですぐに倒れてファウルをもらって、FKのうまい選手が決めて点を取って勝つ。果たしてそれで、観ている人たちは面白いだろうか? そうじゃないだろう、だったら我々は世界のスタンダードを目ざそう。それができるようになったら、他のクラブより予算が少なくても他のクラブにはない魅力を感じてもらえるんじゃないか、ということです」