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湘南の会長が語る「Jリーグと平成」。
クラブが個性を出す本質的な意味とは。
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byGetty Images
posted2019/04/30 11:05
湘南は若い選手が育つ場所、というイメージは確立された。それはもはやチームのDNAになっている。
中田英寿は21歳で海を渡った。
──若い選手を積極的に起用していくのも、ベルマーレのチームカラーになりましたね。
「昨年のルヴァンカップ決勝はプロ1年目の選手が2人スタメンで出場しました。坂圭祐と金子大毅で、途中出場の松田天馬も大卒の1年目でした。決勝戦のMVPに選ばれた杉岡大暉は、高卒の2年目です。
外国籍の選手はベンチに3人いましたが、ひとりも出場していません。こういう選手の構成は、ビッグクラブではなかなか成立しないでしょう。それが良いというつもりはありませんが、若い選手のモチベーションにはなるでしょう」
──それはもう、間違いないですね。ベルマーレというクラブを選ぶ理由になります。
「最近ね、『家族で引っ越しますので、ベルマーレでプレーしたいんです』という選手が、育成組織に来てくれるんです。『いやいや、お宅の近くにも大きなクラブがあるじゃないですか』と言うんですが、ぜひにと。
振り返ればベルマーレの前身のフジタも、トップクラスの選手ばかり集めていたわけではない。日本代表に選ばれた名塚善寛や岩本輝雄は、高校まで無名の存在でした。そうやって若い選手を育てていくのは、我々のDNAなのかもしれませんね」
──東京五輪世代の杉岡選手は、今後の活躍次第で海外クラブからオファーが届くかもしれません。これまでも遠藤航選手、永木亮太選手らを他クラブへ送り出してきましたが、移籍についての考え方は?
「クラブ経営の観点で言えば、海外移籍には連帯貢献金と育成補償金があり、育成補償金は23歳以下の選手の移籍で発生するものです。移籍に伴う収入を得るのは、やはり大事でしょう。選手のキャリアを考えても、ベルマーレから国内のクラブへ移籍して海外へ行くよりも、チャンスがあるならできるだけ早いほうがいい。24歳とか25歳で移籍しても、リーグによっては中堅選手の扱いで、その後のステップアップが難しいですから。
中田英寿が21歳でベルマーレからペルージャヘ移籍したのは、示唆に富んでいると思います。もし海外でうまくいかなかったら、戻ってくればいい。うまくいった選手も、Jリーグに戻ってくるなら我々のもとに帰ってきてほしい」
──10代後半から20代前半の選手を海外へ送り出しても、J1で戦い続けられる力がついてきている、という言い方もできますか?
「育成も頑張ってくれています。毎年2人ぐらいはトップチームに昇格できるサイクルができているかな、という感触はあります」