松岡修造のパラリンピック一直線!BACK NUMBER
修造、ゴールボール挑戦!天摩由貴は
「視覚以外の全感覚」で勝負する。
text by
松岡修造Shuzo Matsuoka
photograph byYuki Suenaga
posted2019/04/28 08:00
155cmの天摩さんと、188cmの修造さん。身長差を示すために、修造さんは「失礼します」と天摩さんの手をとった。
視覚以外の全感覚を使ってプレー。
松岡 耳を澄ませると、ボールは見えてないんですけど、なんとなく軌道がわかりますね。もしかするとこの軌道をちゃんと読めるかどうかがディフェンスをする上ですごく大事なんじゃないですか。
天摩 その通りです。それと、よく紹介文にも書かれているんですけど、ゴールボールは、視覚以外のすべての感覚を使ってやるスポーツなんです。ラインを触るのに手や足も使いますし、仲間との距離感は声や音を耳で聞いて判断する。試合中は、アイシェードに触るだけでも審判の許可が必要で、まったく見えないからコート内で迷子になることもあります。
松岡 じゃあ、松岡修造はゴールボールの応援には行けません。
天摩 どういうことですか?
松岡 だって僕、応援がうるさいから(笑)。コートまで声が届いて、みなさんの距離感とかをめちゃくちゃにしてしまいそうです。
天摩 なるほど(笑)。だから試合中にボールが転がっている間は、観客は静かに見守るというのが暗黙のルールになっています。
テニスと同じ、音での予測。
松岡 それはテニスと同じですね。コースを予測するのに、打球音を聞くのはすごく大事。僕たちも本気で練習をするときは音があるとジャマに感じてできないですから。
天摩 でも、ウォーミングアップ中は音楽が大音量で鳴っているときがあるんです。私たちは競技中だけでなく、日常生活でも音を頼りに生活しているので、その音を拾えなくなると困ってしまう。仲間がどこにいるかわからなくなったり、自分がどっちを向いているかわからなくなったりして、すごく不安になることがあります。
松岡 それは難しい問題ですね。観客の皆さんも盛り上がりたいだろうし、スポーツだからある程度の魅せる演出も必要。こういったことも今日初めて聞きました。
天摩さんは、大変理知的な話し方をする。初対面の修造さんを相手に、冷静に、よどみなく自分の状況を説明していくところを見ると、女子日本代表チームの主将に抜擢されるだけの胆力が備わっているようだ。……と、修造さんがボールを手でポンポンとたたき始めた。どうやら、実際にこのボールを投げたくて仕方がない様子だ……。
(第2回に続く/構成・小堀隆司)