【NSBC補講I】 池田純のスポーツビジネス補講BACK NUMBER
「スポーツで街を活性化」とは何か。
池田純がさいたまに感じる可能性。
text by
池田純Jun Ikeda
photograph byAFLO
posted2019/05/07 07:00
ツール・ド・フランスの日本大会「さいたまクリテリウム」は開催6回を数え、多くの観客が詰め掛ける。
1万人前後のイベントは需要がまだまだある。
これからの時代は今まで以上に「多様性・コミュニティ型社会」の時代に突入していきます。なので、5000人や1万人の熱いファンを集められるイベントというのは想像以上にありますし、これからもより一層増えていくでしょう。バスケットや卓球やバレーボールはもちろん、eスポーツ、地域アイドルや声優さんのコンサート、シニア向けのイベントなど、やりたいけれど会場を確保できなくて実施できていないものがもうすでに数多くあるはずです。
それを引き受ける場所として、さいたまには巨大な可能性があります。
それから、私が個人的に実は注目しているのが、荒川の河川敷です。何十面と野球グラウンドやサッカー場が並んでいるため、広い面積がとれてスポーツイベントに使いやすい。たとえばレッドブル・エアレースのようなこともできるかもしれません。他にもいろいろな「人々が楽しめる」アイデアを出すことができるんじゃないか、と思います。結局、「楽しいところに人は集まる」のです。
「そんな大きな規模のイベントは、さいたまクラスの大都市でないとできないのでは?」という反応もあるでしょう。
でも、この考え方は、街のサイズに応じてダウンサイジングすれば、どんな自治体であっても、いくらでも適用可能です。「あの街と言えば○○だよね」という独自性のあるスポーツやイベントを、街の規模、条件でまかなえるサイズでやればいいんです。
アリーナを作るのは難しくても、イベントや地域文化を育てていくことはできます。街に住む人にとっても、日本全国にいるその競技のファンにとっても、プラスの影響があるはずです。要はモデルケースをそっくりそのまま真似してもだめで、地域独自のオリジナリティが大切です。
日本社会の特性も、先行者に有利。
あとは日本特有の性質を考えても、スポーツのブランディングで先行した街は大きなアドバンテージを得られると思っています。
アメリカでは、メジャーリーグの球団が自治体にお金を積まれて頻繁に本拠地を移したりしますよね。でも私は、日本で同じ現象は起こりづらいと思っています。
それは、スイッチングコストが違うからです。たとえばベイスターズにはずっと、新潟移転という話がありました。でも少なくとも当時は、どんなにお金を積まれたとしても新潟に移転するという選択はありえないと私は考えていました。それは、1年間を通じ、野球を観て応援しようという文化が、どの街にも同じようにあるわけではないからです。
野球ですらそうなのに、より小さなスポーツであればなおさらです。
だからこそ、さいたま市がスポーツファンの心を掴んで地元に文化として浸透させることができれば、たとえ他の街が予算を積み上げたとしても、そう簡単に大会が他の都市に移っていくことはない。つまり、持続的に人に来てもらうことができるんです。