JリーグPRESSBACK NUMBER
強さと脆さが同居したACL逆転劇。
鹿島が勝ち続けるために必要なこと。
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byAFLO
posted2019/04/10 11:45
鹿島は勝負強い、という言葉でこの勝利を片づけてはいけない。選手たちは危機感を持っている。
安部「少しでも早く自分のスタイルを」
「現実的な話をすれば、2点リードすれば、相手はリスクを背負わなくなるし、守備的になるのは当然のことじゃないですか? だから僕らが攻めることができた。攻めやすくはなる。そういうことです。でもこういう戦い方では、勝ち続けることは難しいと思います」
安部は淡々と試合を振り返った。仕掛けたい場所でボールを受ける機会が少なく、自分の持ち味を出し切れたとは言えなかった。
サッカーは11人でやるものであり、自分のことだけを考えてプレーするわけにはいかない。それを理解しながらも、もどかしさが残っているようだ。「少しでも早く自分のスタイルを確立できれば。チームが苦しい時に『それでいこう』と言ってもらえるような」と語った。「勝利」という結果だけでは燃焼しない想いがあるのだろう。
勝利はすべてを正解にしてくれるが。
「勝利への執念」が強いからこそ、鹿島は逃げ切りが上手く、逆転できると言われる。それを象徴するような試合が続いたが、安堵ではない感情を抱いていたのは、安部だけではなかった。遠藤も慶南戦前日に語っている。
「名古屋戦も勝利はしたけれど、もっとできる部分はあった。それはみんなわかっている。もっともっと良くしなければいけない。内容も上向きにしないとACLもJリーグも獲れない。一昨年、前半0で抑えれば後半なんとかなるみたいな流れがあった。確かにそうやって勝てるのはいいチームだと思うし、内容云々よりも結果というのも大事なこと。
でも、それだけじゃ勝ち続けられない、10回やって8回勝てるような試合内容じゃないと。(名古屋戦は)後半の20分、25分だけ鹿島の試合になったけれど、その時間をもっと長くすることが、僕らの課題になってくる」
勝利はすべてを正解にしてくれる。しかしその喜びに浸っていれば、落とし穴は必ずある。そのこともまた鹿島の選手たちに染み付いた発想だ。
「確かにこの6ポイント(2連勝)は大きい。でも次のFC東京戦が大事。そこで勝てなければ意味がない」
代表招集を経て、逞しさをまとった安西はそう言い切る。シーズンは長い。一喜一憂している余裕はない。