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強さと脆さが同居したACL逆転劇。
鹿島が勝ち続けるために必要なこと。
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byAFLO
posted2019/04/10 11:45
鹿島は勝負強い、という言葉でこの勝利を片づけてはいけない。選手たちは危機感を持っている。
不利に働く風、そして2点ビハインド。
しかし前半を見る限り、監督の決断が功を奏したとは言えなかった。
スコアレスドローで前半を終えたが、前半終了間際にGKのクォン・スンテが負傷退場してしまう。
そして「風下の前半は難しい試合になったけれど、後半になれば、風上に立てると思っていた。でも、後半になった途端、風向きが変わった」と三竿が話すように、鹿島は前半に続き後半も逆風に向かう形での試合を強いられた。ボールが戻るほどの強い風に雨、ピッチの状態も決して良いとは言えなかった。
後半11分にオウンゴールで1点を失い、後半26分に遠藤に代えて小田逸稀を投入。平戸を攻撃MFにあげ、小田が右サイドバックに立つ。しかし、交代直後のセットプレーで小田のマークが外れた結果、慶南に追加点を許した。
2点リードした慶南は自陣に引き、逃げ切りを図る。
1人少なくなり、やることが明確に。
しかし逆に、「相手が引いてくれたので、こちらがうまく押し込めた」という安西のクロスから、今度は慶南のオウンゴールが生まれたのが後半30分。ここからやっと鹿島のギアが上がる。
それでも慶南のカウンターは脅威であり続け、後半39分に犬飼が2度目の警告を受けて退場。DFラインには三竿が入った。
「退場するまでは、相手にペースを握られてしまった。でもそこからは、点を獲りに行かなくちゃいけないとやることがハッキリした。中で作って、サイドに展開して、最後仕留めようという話はみんなで確認していた」と振り返る金森は、後半46分、言葉通りに左の安西が起点になった攻撃で同点弾を決める。
そして48分、左からのパスを小田がヘディングで繋ぎ、最後はセルジーニョが右足で蹴りこみ、劇的な逆転弾が生まれる。金森、小田という出場機会の少ない選手たちが大岩監督の起用に答えた。平戸や名古も歓喜の輪に加わりながら、自身の足りなさと安堵感を抱いただろう。
「2失点してしまうというのはディフェンダーとしては許されないこと。それでも勝ってくれたことには感謝している」と話した町田浩樹。フランスに渡った昌子源がよく口にする「ディフェンダーは失点することで成長できる」というのは、大岩監督が伝えた言葉でもある。やられることで得る課題は、成長のきっかけとなる。そのうえ勝利まで経験できるのだから、鹿島の選手が成長するのも当然かもしれない。