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オランダでもがく板倉滉の逆襲。
「堂安がA代表、自分はアンダー」
text by
林遼平Ryohei Hayashi
photograph byVI Images/AFLO
posted2019/04/06 11:30
マンチェスター・シティ移籍が話題となった板倉滉だが、まずはオランダの地で自らの能力を発揮したい。
堂安に「負けたくない」気持ち。
不安がないわけではない。焦りがないわけではない。
同世代の選手たちが試合に絡むようになっている一方で、自分だけが試合に出られていない。その現状を不安に思わないはずがない。
ただ、自分で決断して選んだ道を否定するつもりもなかった。
「早く試合に出たいなという気持ちは強いし、みんながJリーグで出ているのを見て焦る気持ちもある。だけど、実際に海外に来て、やっぱり球際のところなど日本で感じられないことを経験できている。
それを実戦で生かせれば一番いいけど、ここで“もっとやらなければいけない”と思えることは自分にとってプラスなのかな。いや、プラスにしていかないと。そういったことを、海外で経験できているのはいいことだと思ってやっている」
心にたぎる炎を絶やすことなく、前を向いて戦えるだけの理由もある。
2つ年下の後輩ながらA代表で大きく評価を上げ、フローニンゲンでも絶対的な地位を確立している堂安律の存在もその1つだ。
「いい刺激になる一方で、悔しい思いもある。例えば、あいつがA代表に行って自分はアンダー世代の代表に行くわけですから、そこの悔しさはありますよね。だけど、自分の身近にああいった存在がいるので、負けたくないという気持ちで毎日練習ができる。それは刺激しかないです」
森保監督が感じ取った成長とは。
3月初旬、A代表と五輪代表を兼任する森保一監督は、欧州視察の際に板倉やズウォレの中山雄太ら五輪世代の選手たちの下を訪問した。コミュニケーションを図り、現状を知る。もがき、苦しむ男たちと顔を合わせた指揮官は、彼らの成長をこう表現している。
「厳しい環境の中でもすごくいい顔をしていた。レギュラーを掴み取るんだというハングリーさが出ているというか、なかなか日本のように助けてくれる人がいない中、私生活、環境、クラブのポジションを勝ち取るために戦っている。そういうところを見ることができた。悔しさがにじみ出ていたという感じ。
現実をしっかりと受け止めていて、自分にどこが足りない、どういうことをしなければいけないと、すごく冷静に考えて、自分のポジション、ヨーロッパでの成功を掴み取ろうとしているなと感じた」