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原口元気、浅野拓磨の試練は続く。
ハノーファーが6連敗で最下位に。
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph byUniphoto Press
posted2019/04/05 17:30
シャルケ戦ではサイドバックでもプレーした原口。指揮官から絶大な信頼を寄せられるも、厳しい残留争いの渦中にいる。
FW問題は解消も、課題は山積み。
ゲームは一進一退の展開となりました。この日のハノーファーは、それまでと比べると攻守が機能していて、先発出場した原口も4-4-2の右MFの位置で精力的にピッチを動き回っていました。ハノーファーはエースFWのニクラス・フュルクルクが長期離脱中で、穴を埋める活躍が期待された浅野も怪我がち。深刻な得点力不足に悩まされてきました。
現在は下部リーグから立身出世を果たしたFWヘンドリック・バイダンツが一身に期待を背負う形ですが、チーム内得点王の彼が4点という数字では限界があります。
しかし、今冬にベテランFWニコライ・ミュラーがレンタル加入すると、少しずつ改善の兆しが見えてきています。実際に原口も「ニコライがチャンスシーンに顔を出せれば、得点機会が多く生まれると思う」と、手応えを口にしています。
ただ、ハノーファーの根本的問題はFW陣だけに留まりません。
このチームにはゲームを掌握できるプレーメイカー、そして、最終局面で自己の存在を誇示できるディフェンスリーダーが見当たりません。せっかくボールを保持してもパスを要求するのはセントラルポジションの選手ではなく原口やフローレント・ムスリヤなどのサイドプレーヤーのみ。ゲームコントロールできない惨状はドル監督も認識していて、その課題を払拭する狙いで原口をボランチで起用するゲームもありました。
また、相手に攻勢を許すとシュンとなる守備網も心許なく、そのバックラインが単純なミスを犯して失点すると反撃の気概さえも消し飛んでしまいます。
シャルケ戦で見せた改善の兆し。
そんな、どん底の流れもシャルケ戦では若干改善されているように見えました。前半終了間際にズアト・ゼルダルに先制を許すも、後半は相手陣内でゲームを進めてゴールまであと一歩まで迫ります。ちなみに原口は後半開始から4バックの右サイドバックへシフト。原口は先述したように様々なポジションで起用されていますが、ここ7試合はフル出場を続けていて、ドル監督から絶大な信頼を寄せられています。
本人も、自らのポジションが移り変わることをネガティブに捉えておらず、今回も「サイドバックになってからの方がボールを受けやすくなったし、後方からボールを運んでチャンスに関われるようになった」と、前を向いていました。
この日は、浅野も後半途中に交代出場して右MFのポジションでプレーしました。浅野と原口のライトラインは攻撃の可能性を如実に示し、ふたりのパスコンビネーションから原口が左足シュートで相手ゴールを強襲するシーンも創出しました。
「あれは『入った!』と思ったんだけど……。残念だった」とは原口の弁。また浅野も「手応えというほどではありませんが、復帰から徐々にプレーフィーリングが掴めてきたように思います」と語り、今後への期待を抱かせるコメントを残しています。