サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
森保ジャパンはエゴを肯定する。
堂安・南野の思想に香川の反応は?
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byTakuya Sugiyama
posted2019/03/26 11:50
堂安、南野、中島の3人はシュートレンジが広い。それは技術と同時に、精神的な能力でもある。
「いける!」という感覚を尊重できるチーム。
24歳の南野拓実は今の代表チームを「味方のゴールへ向かう気持ちやエゴを尊重できる集団」だと表現する。
コロンビア戦では、南野自身も周囲からの尊重を感じるシーンがあった。
「もちろん、見えていましたよ。でも自分の前にスペースがあったし、打てる感覚があったので。そういう状況もわかってシュートを打ちました」
南野がそう振り返ったのは、右サイドから中に入ってシュートを放った前半10分のシーンだ。左サイドから中央へ入ってきた中島翔哉もフリーだったが、南野はゴールまでの距離に臆することなく左足を思い切りよく振り抜いた。結果的には、GKが辛うじて弾き出し、CKへと逃げられてしまった。
「見えていた」というのは、中島がフリーでパスを受けられる状況にいたことである。
実際にパスを出すコンビネーションはなくとも、お互いのゴールへ意識が共鳴している。そんな阿吽の呼吸を南野は感じ取っている。
「それぞれの選手の『いける!』という感覚を尊重していけるチームです。だから、味方がそういう気持ちをもっていても、自分も理解できますし」
めまぐるしく攻守が入れ替わるなかで最適な判断ができない瞬間も当然あるが、そういう部分も試合の後に間違っていたと認め合える集団だとも南野は感じている。だからこそ、こう話すのだ。
「打つという気持ちや積極性というのが、何よりも大事だと思うので」
堂安は南野の強気な判断に拍手。
なお、前述のシュートシーンを右サイドから見ていた堂安は、南野の一撃に対して、両手を叩いている。味方の強気な判断を祝福するかのように。
「僕も前線の選手ですし、拓実くんも若いうちから海外でやっている。メンタル的なところで、海外で生きぬくうえで同じ心境のなかでやってきたと思う。自分が点を獲れると思っているし、自分のシュートに自信を持っているからそういうマインドになっています」
周りがいくら環境を整えたからといって、当事者である選手たちに「自分の良さを出してチームを勝たせる」という気概がなければ、アクションは生まれない。
だからこそ、彼らのゴールを目指す姿勢にブレーキがかけられるべきではない。スケールの大きな選手を日本サッカー界が育てていくためには、自分の良さで勝負するという前提の上で、状況に応じた判断力を磨いていくことが必要なのだ。そして彼らの考え方は、堂安も語るようにヨーロッパではスタンダードなものである。