球体とリズムBACK NUMBER
グランパスは過去より「前」を見る。
風間監督とランゲラックの似た言葉。
posted2019/03/19 17:00
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph by
AFLO
「みなさんが訊きたそうな質問ですね」と風間八宏監督は言って、半分笑った。「でもチームは生き物。(昨季とは)まったく違うので、過去は関係ないと思います」
名古屋グランパスが敵地でFC東京に0-1で敗れた後、アウェーチームの監督会見の最後に質問すると、風間さんはそう返答した。かつてテレビでもよく見たその苦笑いに、悪意はおそらくない。
こちらは次の通りに問いかけた。
「連勝後の第4節で初黒星。これは昨季と同じ(昨季は2勝1分の後に敗北)ですが、(その後8月まで勝てなくなった昨季と)同じ轍を踏まないためには、何がカギになると思いますか」
指揮官の言う通り、多くの人が訊きたいことだと思っていたけれど、誰も質問しないので、自分ですることにした。あるいは登壇者の気を悪くさせてしまったかもしれないが、僕は自分の仕事をしようと思った。
風間スタイルは完成度を高めたか。
名古屋は昨季、ジェットコースターのように浮き沈みの激しいシーズンを過ごした。連勝スタートのあと、引き分けを挟んで11連敗。その後、7連勝で浮上するも、再び黒星が先行し、最後は他会場の結果を待ってなんとか残留を決めている。
一昨季のJ2を含めて、3年目の指揮を執る風間監督のもと、名古屋は今季も攻撃的なパスサッカーを披露。第3節までにリーグ最多の9得点を奪って3連勝し、首位でこの日を迎えていた。
観客を魅了するスタイルは、いよいよ完成度を高めているのか。いや、昨季の二の舞を演じることはないとは、誰にも断言できない。そんなことを、味の素スタジアムへ向かう保土ヶ谷バイパスあたりで考えた。
春の訪れを感じさせる穏やかな午後、両チームはキックオフ直後から互いの持ち味を十分に発揮する。2勝1分の2位と、こちらも好スタートを切ったFC東京はホームの大声援を受けて、最初の決定機を迎える。東慶悟のスルーパスを完璧にトラップした永井謙佑がGKランゲラックと1対1のチャンスを得たものの、シュートは枠を外れていった。