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仙台vs.神戸で心に残った歌の力。
復興も応援もサッカー流でいこう!
text by
川端康生Yasuo Kawabata
photograph byJ.LEAGUE
posted2019/03/17 08:00
仙台vs.神戸戦ではテノール歌手・秋川雅史さんがゲストで登場。「歌」のパワーを明確に示してくれた。
「翼をください」という選曲。
そして、その2曲目の選曲が(と再びサッカーの話ではなくて申し訳ないが)また絶妙だった。秋川さんは「翼をください」を歌ったのだ。
もちろん震災復興という意味でもふさわしい歌詞とメロディ。しかし(もしかしたら知らない世代もいるかもしれない)日本が初めてのワールドカップ出場をつかんだフランス大会予選。崖っぷちに追い込まれ、最後の最後、ジョホールバルで歓喜に辿り着いたあの予選で、青いサポーターたちが声を嗄らしたのがこの歌だった。
つまり、鎮魂の「千の風になって」から始めて、トークで湿っぽさを拭い去り、そしてキックオフへ向けて「翼をください」でサッカーへと導いてくれたのである。
少なくとも僕はそんなふうに誘われた。ミニライブではあったが、本当に見事なパフォーマンスだった(秋川さんは日本代表戦でもっとも多く国歌独唱をしているらしい。さすが!)。
記憶を蘇らせる「歌」の力。
ちなみに“ジョホールバルの歓喜”の4年前、アメリカ・ワールドカップ予選のときには「上を向いて歩こう」がスタンドに響いたし、やっぱり最後の最後、ドーハで悲嘆にくれたときには「リパブリック讃歌(アメリカへ行こう、みんなで行こう)」がヘビーローテーションされていた。
最近めっきり記憶力が怪しいというのに、歌と紐づいた記憶は忘れないどころか、こうやってスラスラと自然に思い出せるから不思議だ。
別に昔のことばかりではない。たとえば「恋人も濡れる街角」を聞けば仙台から70キロ、牡鹿半島の港町のチーム(残念ながら再び東北リーグ)が思い浮かぶし、「あとひとつ」が流れてくればマウンドに仁王立ちするマー君の姿が……。
とにかく、耳にすると、その場面が思い出され、そればかりかそのとき一緒にいた仲間やその場の空気まで一緒に蘇らせてしまうような、そんな力が歌にはあるのだと思う。