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仙台vs.神戸で心に残った歌の力。
復興も応援もサッカー流でいこう!
posted2019/03/17 08:00
text by
川端康生Yasuo Kawabata
photograph by
J.LEAGUE
秋川雅史さんのトークが絶妙だった。
その圧倒的な歌声で、スタジアムに荘厳さを醸し出した直後の挨拶を「みなさん、こんにちは。今日はこのユアテックスタジアムに……“千の風”に乗って花粉が盛大に飛んでおります」と切り出して、見事に観客の肩の力を抜いた。
復興応援試合も今年で3年目になる。
東日本大震災発生の時期に、ベガルタ仙台とヴィッセル神戸のカードをマッチメイク。震災の記憶を継承するとともに、(仙台だけでなく)すべての試合会場で募金活動を行い、Jリーグは復興の後押しに取り組んできた。
ただ、3年目となった今年はこれまでとはムードが少し違うように感じた。
スタンドに掲げられた横断幕に震災に関連したものは目にしなかったし、2年前は設けられていた慰霊台もなかった。
3年目、変化する向き合い方。
「いつもより早めに来た。イニエスタを練習から見たいと思って」という男性をはじめ、サポーターから聞こえてくる話題のほとんどは「V(ビジャ)I(イニエスタ)P(ポドルスキ)との対戦」で、そう口にする彼らの顔は、当然、これから始まるゲームへの楽しみに満ちていた。
「神妙な顔しててもしょうがないでしょ」と話してくれたのは中年夫婦の奥さんの方だ。
「復興は復興で頑張らなきゃいけない。でも今日はサッカーを観に来てるんだから、神妙な顔しててもしょうがないじゃない」
仙台のサポーターたちの“この日”への向き合い方が腑に落ちた気がした。
それでも試合前のセレモニーでは被災時の映像が流れるから、どうしても神妙な面持ちになる。