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真剣にサッカーをする大人が減少中?
仕事を犠牲にしない道は可能なのか。
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byGetty Images
posted2019/03/18 08:00
元ヴァンフォーレ甲府の阿部翔平も東京シティFCには参加している。サッカーをライフスタイルにできるか。
サッカーから人を遠のかせる多くの要素。
とはいえ、実際はサッカーに軸足を置かざるを得ない選手も多い。早朝や夜の練習参加を優先するために、時間に融通の利く仕事に就く。フットワーク重視で契約社員やアルバイトの立場を選ぶ。シーズン中は週末に試合が組まれるので、土日も出勤する職種は選ばない。仕事を変えながらサッカーを続ける。あらゆる種類の犠牲を払って、サッカーを続けている社会人選手は多い。
安定した仕事を得ているとしても、悩みは確実に忍び寄る。年齢を重ねていけば、責任が伴うようになる。誰かに代わってもらうわけにはいかない仕事が増え、サッカーに割ける時間が減っていく。「ケガをしたので休ませてください」なんてことを口にしたら、上司に渋い表情をされてしまうだろう。
結婚をする、子どもが生まれるといった人生の岐路を迎えたら、仕事に本腰を入れるべきだと勧められるのが普通だ。サッカーとの両立に対する理解を周囲から得るのは、いよいよ難しくなる。
所属しているクラブがカテゴリーを上げられず、それなのに自分の年齢だけは上がっていけば、友人や知人との比較で居心地の悪さを覚えたりもする。もうこれ以上は続けられない、そろそろ社会人選手のキャリアにピリオドを打つべきか──そんな思いで真剣勝負の舞台から去っていく人は、少なくない。
首都圏近郊であれば、思い切りボールを蹴ることのできる環境が乏しいことも、両立を難しくしているところはあるだろう。
「兼業フットボーラー」を目指すクラブ。
東京シティFCというクラブがある。'19年は東京都社会人リーグ2部で戦う彼らは、J1を頂点とするサッカーピラミッドで「J8」に属している。将来的なJリーグ入りを表明しているものの、その道のりは遥けきものである。
ところで、彼らが掲げる価値観が面白い。GM兼監督の深澤佑介さんは、「仕事にもサッカーにも本気で取り組める選択肢を生み出したい」と話す。サッカーを続けるために仕事を犠牲にするのではなく、仕事にもサッカーにも同じ情熱を注ぎ続けられる環境を選手たちに提供しながら、結果も求めていくというのだ。名付けて「兼業フットボーラー」である。