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極寒の東京マラソンで2時間4分台。
アフリカ勢が教えてくれた真の強さ。
text by
金哲彦Tetsuhiko Kin
photograph byKiichi Matsumoto
posted2019/03/09 08:00
大迫傑も苦しんだ低温での東京マラソン。最終的にケニア、エチオピア勢の地力を見せつけられる格好となった。
悪条件でも自己最高と33秒差。
注目は、優勝したビルハヌ・レゲセ(エチオピア)のタイム2時間4分48秒である。自己最高記録が2018年ドバイでマークした2時間4分15秒なので、その差はわずか33秒(2018ドバイマラソンは霧で気温は13度)。
悪条件でも力を出しきれたレゲセの結果が、マラソンの“強さ”そのものだろう。
かつて、赤道直下の高地で生まれ育ったケニアやエチオピアの選手たちは、雨や寒いレースでは力を発揮できないと言われた時代もあった。湿度が極端に低く、寒暖の差が激しいアフリカの高地で生活する彼らの宿命のようなものだ。
しかし、今は違う。
トレーニング法やスポーツ栄養学、スペシャルドリンクの中身に至るまで、グローバルで高度なマラソンテクニックが共有される現在、苦手な寒さ対策も問題ない時代になったのだろう。
東京オリンピックでは酷暑が予想される。
高温多湿の気候に慣れている日本人の地の利や我慢強さがメダルへの期待を膨らますだろう。
寒さと暑さ。いずれも難しい気象条件だ。
いかなる状況でも力を出し切れる本当の強さが、メダル獲得の条件である。そのことを、今年の東京マラソンは教えてくれたのではないだろうか。