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極寒の東京マラソンで2時間4分台。
アフリカ勢が教えてくれた真の強さ。
posted2019/03/09 08:00
text by
金哲彦Tetsuhiko Kin
photograph by
Kiichi Matsumoto
期待された東京マラソン2019は冷たい雨に見舞われた。
スタート時の天候は小雨で、気温は5.7度。日本記録保持者の大迫傑(ナイキ・オレゴンプロジェクト)が、肩のあたりをさすっていた映像が寒さを物語っていた。
振り返ると、2007年にスタートした東京マラソンの第1回大会も同じような天候だった。雨脚は今年よりも強かったと記憶している。
そんな悪条件にも関わらず、第1回大会は完走率96.3%という高さ。完走率の高さは、沿道の応援が100万人を超える首都東京で開催されるビッグレースのひとつの特徴となった。
今年の完走率は94.3%、過去ワースト2位である。
途中棄権した大迫傑を含め、リタイアした市民ランナーの多くは低体温症になったと推測できる。
日本人でサブテンはいなかった。
トップアスリートにとっても市民ランナーにとっても、今年の東京マラソンは過酷な気象条件となった。
2020東京オリンピックを目指す日本勢は、堀尾謙介(中央大)を筆頭に、今井正人(トヨタ自動車九州)、藤川拓也(中国電力)、神野大地(セルソース)の4名が粘りのレースでオリンピック代表選考レースMGC(マラソングランドチャンピオンシップ)出場権を獲得した。
とりわけ、堀尾が大学生として初のMGC出場資格者となったことは喜ばしいニュースだ。
しかし、サブテン(2時間10分未満で走ること)ランナーは1人もいない。昨年は設楽悠太(ホンダ)の日本新記録(当時)を筆頭に、9名のサブテンランナーを輩出した。それと比べると、残念な結果に終わったことは否めない。
42.195kmという長丁場、コースの高低差や風、気温などの気象条件も異なるマラソン競技は、様々なファクターで記録が大きく左右されるサバイバルスポーツである。
ただ速いだけではない、悪条件をはねのける“強さ”も要求されるのだ。