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マラソンでは双子の弟の陰だが……。
設楽啓太の目標は「日本記録更新」。
posted2019/03/06 11:30
text by
小堀隆司Takashi Kohori
photograph by
Yuki Suenaga
東京マラソンのフィニッシュエリア、表彰式が行われた丸ビル内で、男子マラソン界の主役のひとりを見かけ、思わず声をかけた。
――厳しいコンディションでしたね。
「きつそうでした」
そう応じたのは、設楽悠太だ。昨年の東京マラソンで日本記録を樹立し(現在は日本歴代2位)、すでに東京五輪のマラソン日本代表を決めるMGC(マラソングランドチャンピオンシップ)の出場権を得ている余裕だろう。もし自身が走っていたら、との問いかけにはこう続けた。
「おそらく佐藤(悠基)さんや大迫(傑)にはついていったと思います。そして最後はたぶん死んでた(苦笑)。それぐらいきつそうでした」
先頭集団についていった組は苦戦。
設楽が言うように、2019年の東京マラソンは厳しい気象条件に見舞われた。スタート時から降っていた雨はいっこうに降りやまず、1時間半が経過した10時半時点で東京駅前の気温は4.7度まで冷え込んでいた。日本屈指の高速コースで、総じて記録が低調だったのはこの寒さによる影響が大きい。
序盤からペースメーカーに先導されたケニア、エチオピア勢が日本記録を上回るハイペースで飛ばす中、佐藤や大迫、中村匠吾が果敢に先頭集団に食らいついていったが、佐藤は30km以降にペースダウンし、大迫に至っては寒さで体が動かなくなり29km付近でのリタイアを余儀なくされた。
設楽は東洋大時代の仲間を応援に来たようだが、1学年後輩の高久龍は2時間11分49秒の9位でワイルドカードでの出場条件を満たせず、双子の兄・啓太もまた2時間14分41秒で14位と結果を残すことができなかった。