“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
大宮帰還で湘南仕込みの足を駆使。
石川俊輝に「なあなあ」はない。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2019/02/27 10:30
走る湘南を経て育成組織時代に所属した大宮へ。石川俊輝としては覚悟を決めてJ1昇格に挑む。
最終ラインに落ちて組み立て。
印象的だったのが、28分から31分にかけてのシーンだ。リトリートした甲府に対し、大宮は後方でボールを回す。そこで石川は甲府のラインが下がっていることに感づくと、最終ラインまで落ちる。
すると河面は高い位置まで張り出してポゼッションに加わり、菊地と山越もミドルゾーンにポジションを移した。結果、相手のクリアを山越が拾って縦パスを送り、クロスへとつながる。相手DFに弾かれたボールを菊地が前向きに拾って、攻撃を継続。最後は大前の縦パスから河面が左サイド深くに侵入し、再びクロスを上げた。
しかし計3回のクロスがクリアされ、センターサークル内で動き出した甲府のFWピーター・ウタカにボールが渡る。カウンターのピンチに晒されたが、真っ先にウタカにプレスし、ボールをかき出したのが石川だった。
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その石川のクリアを山越が拾い、センターライン付近右で大山がボールを持って出しどころを探していた、すると中央に石川が顔を出してボールを受けた。パス交換の中心となり、甲府の守備陣を食いつかせた。
スルーパスにロングスプリント。
そして31分、大山のクロスが上がった瞬間、石川は甲府守備陣の隙を突いて、バイタルエリア中央に入りこむ。甲府DFが頭で弾いたボールの落下地点に入った石川はDFを冷静に見極めて、右足インサイドでトラップしてからライナー性のスルーパスを送る。
ターゲットは相手CBと左サイドバックの間にポジショニングした茨田だった。
「バラ(茨田)とも目が合って出せると思って出しましたし、バラの技術ならターンできると思った」
抜け出した茨田は相手DFの素晴らしいタックルにあって、ゴールこそならなかった。しかし攻撃に厚みをもたらし、カウンターのピンチを防ぎ、さらに決定的なパスを送り込んだ一連の流れは、石川の高い戦術眼と判断力、出足の鋭さが凝縮されたものだった。
38分にはクリアが左サイドのMF中村太亮に渡ると、石川は自陣深くから相手ペナルティーエリア付近までロングスプリント。ボールこそ出なかったが驚異の走力だった。