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投本間の距離とマウンドの高低。
先鋭的な野球ルール改定は必要か。
 

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芝山幹郎

芝山幹郎Mikio Shibayama

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posted2019/02/16 11:00

投本間の距離とマウンドの高低。先鋭的な野球ルール改定は必要か。<Number Web> photograph by Getty Images

マウンドが低くなるきっかけの1人となったボブ・ギブソン。当時のようなルール改定は本当に起きるのだろうか。

貧打が蔓延→インフレ政策。

 結局この年、規定投球回数以上を投げて防御率が1点台の投手は7人も出現した。大リーグ全体の防御率は2.98。これは1919年以降では、いまも史上最低の数字だ。

 大リーグ全体の平均打率は、前年の2割4分2厘から2割3分7厘へと低下し、3割打者は大リーグ全体で6人しか生まれなかった。ア・リーグの首位打者カール・ヤストレムスキーの打率は3割1厘にとどまっている。

 これだけ貧打が蔓延すれば、ルール改定もやむを得ない。マウンドは約15インチ(球場によって高さが少しずつ異なった)から約10インチに下げられた。結果は歴然。大リーグ全体の平均打率は2割3分7厘から2割4分8厘へと跳ね上がり、1試合当たりの平均得点も3.42から4.07へと増えた。

 全体の安打数も2万5710本から3万2581本、本塁打数に至っては1995本が3119本へと飛躍的に伸びている。リーグ拡張で4球団が新設されたとはいえ、打高投低をめざすインフレ政策は功を奏したと見てよいだろう。

現在は極端な投高打低ではない。

 では、最近の動向も、当時に準じるものだろうか。

 大リーグの総本塁打数は、2017年の6105本から5585本('18年)へと減少した。打率も2割5分5厘('17年)から2割4分8厘('18年)へと低下した。だが、この数字を見る限り、1968年ほど極端な投高打低現象が生じているとはいいがたい。

 この状況で、マウンドを低くする必要はあるだろうか。高い場所からの投げ下ろしが圧倒的に優勢だった昔とちがって、いまはリリースポイントの位置が「頭よりも低い」速球投手が優勢というデータも、すでに出ている。

 一方で、低いマウンドから速い球を投げようとすれば、肩や肘にかかる負担が大きくなるという説は根強い。'68年の大リーグ最多勝投手デニー・マクレインなどは、マウンドが低くされてから痛み止めを濫用しはじめ、'69年を最後に鳴かず飛ばずになってしまった。

【次ページ】 拙速な結論は避けた方が。

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