スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
投本間の距離とマウンドの高低。
先鋭的な野球ルール改定は必要か。
posted2019/02/16 11:00
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph by
Getty Images
60フィート6インチ。
野球好きにとって、これは黄金の数字だ。
投手と本塁の間の距離。より正確にいうと、投球板のホーム寄りの縁から、ホームプレート最後端までの距離。大リーグがこの数字を採用したのは1893年のことだが、6インチという端数が気にかかる。
それまで、投本間の距離は50フィートだった。距離が延ばされたのは、当時、投手の球が急に速くなったためだ。極端な投高打低が懸念され、投本間の距離は60フィートに延ばされることになった。
ところが、書かれた文字がいい加減だったせいで、60'0''の数字が60'6''と読みちがえられてしまった。不審に思う人も皆無だったと見えて、数字はそのまま定着し、現在に至っている。
ちなみに、本塁と一塁の間は90フィート。本塁から二塁までは約127フィート3インチ。野球のダイヤモンドは、これらの数字によって美しくデザインされている。
総安打より総三振数が上回る。
投本間の距離が広がった効果は劇的だった。1892年、大リーグの3割打者は8人しかいなかったのに、'93年は3割5分以上の打者が5人登場し、'94年には4割打者が4人も出現した。'94年ナ・リーグの首位打者ヒュー・ダフィが残した4割4分(4割3分8厘という説もある)の打率は、いまなお破られていない単年最高打率である。
それから約125年――。
2018年の大リーグは、三振の総数が安打総数を上回った。具体的にいうと、球界全体の安打総数が4万1018本('17年は4万2215本)だったのに対し、三振総数は4万1207個(17年は4万104個)に達している。
個別に見ても、三振数が安打数より多いチームは15球団にのぼる。