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5kg減量で「過去最高」のベンゼマ。
クリロナ移籍で手にした自由を謳歌。 

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横井伸幸

横井伸幸Nobuyuki Yokoi

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photograph byUNIPHOTO PRESS

posted2019/02/15 08:00

5kg減量で「過去最高」のベンゼマ。クリロナ移籍で手にした自由を謳歌。<Number Web> photograph by UNIPHOTO PRESS

点が取れないFWというイメージを完全に払拭しつつあるベンゼマ。R・マドリーでのキャリアハイ24点を超えるか。

ロナウドが去り、攻撃の責任が集中。

 好調の理由のひとつとしてワレンムが注目しているのが、減量だ。

「痩せて、強くなった。おかげで緩急の付け方や方向転換が鋭くなっている。DFにしてみれば1、2mの距離を与えることが非常に危険になった」

 コンゴ代表、アルジェリアやモロッコのクラブを率いたこともあるワレンムは、アフリカ人選手の身体的な特徴に精通している。

「サハラ以南の選手は生まれつき線が細く、体重が増えすぎることは滅多にないが、ベンゼマのルーツである北西アフリカの選手はそんなことはない。彼のようなタイプにとって体重はとても重要。実際ベンゼマは体重オーバー時にスランプに陥りやすい。いまは完璧。まるで20歳のような動きを見せている」

 30代に突入したベンゼマは、もともと肉体改造の必要性を感じていたという。そこに、クラブ役員からのリクエストが届いた。

「クリスティアーノ・ロナウドがチームを去った。今季はお前が攻撃をリードせよ」

 身体能力の若返りに真剣に取り組むことを決めた彼は、専門家に相談して、体重と引き替えに敏捷な身のこなしを手に入れられる可能性を知った。そこで自身のDNAを調べ、筋組織を調べ、形態学的な検査も受け、脂肪ではなく筋肉を落として5kg減量することに成功した。

シュートはロナウドが引き受けていた。

 結果は、ワレンムが指摘したとおり。加えて、スタミナとランニングスピードも増している。

 横浜F・マリノスを率いたこともある元フランスU-18代表監督のエリク・モンバエルツは、世代別代表でのプレーを間近で見て以来、ベンゼマの成長と変化を追い続けてきた。そんな彼が挙げる活躍の理由は「心理的解放」と「優れた技術」だ。

「2009年から昨季まで、R・マドリーの攻撃はC・ロナウドで終わるようにデザインされていた。シュートはC・ロナウドが一手に引き受け、周りはそれに従っていた。しかし、もう彼はいない。ベンゼマは『心理的に自由』にプレーできるようになった」

【次ページ】 カリスマではなく技術で引っ張る。

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