“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
J2新潟・早川史哉が復帰できたから
楽しめる「サッカーの難しさ」とは。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2019/02/11 08:00
白血病からの復帰プロセスは容易なものではないだろう。それでも早川史哉は希望を持ってサッカーボールを蹴っている。
今までは自主トレレベルだった。
間違いなく停滞ではなく、前進。正真正銘、早川史哉はプロサッカーのピッチに戻ってきたのだ。
「はっきり言って、今まではサッカーをやっていた感触はない。あくまで自主トレレベルだった。でも、今はサッカーをやっている。最初は単純に動けなかった悔しさが強かったけど、今は組織の一員として凄く悔しさを覚える。チームの一員としての義務が果たせていない悔しさ、情けなさが出てきたんです。周りにも迷惑をかけてしまっている認識もあるからこそ、より自分が情けなく思う」
正直な想いを吐露する早川だが、こんな確信も手に入れている。
「以前は練習試合の映像を見て『こういう現象が起きている』と振り返ることすらできていなかったし、自分自身の違和感、現状を把握できてなかった。裏を返せば、ようやくそのレベルまで辿り着けたということです。頭の中が活性化してきたから、試合中の感覚と照らし合わせて『あ、こうあるべきだ』と認識できているし、『次はこうしよう』と考えられる。それは僕にとって大きな前身ですし、将来への希望だと思います」
悔しい反面、幸せでもある。
空間認知の徹底。そこが今後の課題だろう。今は点と点がズレている感覚だが、それが合わさった瞬間に未来が見える。そして何より、これは決して漠然としていない、明確な課題だ。
「悔しい反面、幸せでもあるのかなと。動けるようになって、このキャンプに参加できているからこそ見えて来たものがある。そういう風に捉えれば、ものすごくポジティブだと思う。それに『壁の正体』が分かっているからこそ、自分がどうやるべきか。ここで持ち前の気持ちの強さを発揮出来るかなと思います」。
いちアスリートの悩みから、フットボーラーとしての悩みに進化した。これまで幾多の苦しい現実と大きな壁に直面しながらも、這い上がって前進し続けている男だからこそ――この壁の先の新しい景色を見るために、早川は今を戦い続ける。