ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
ゴルフ史上最大級のルール変更。
捜索時間から旗竿、キャディーまで。
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byYoichi Katsuragawa
posted2019/02/08 11:00
ピンをさしたままパッティング、という珍しい場面。松山英樹は「どっちがいいかわからない」と様子見。
旗竿はあった方が入りやすい?
ブライソン・デシャンボーという米国人選手がいる。ニックネームは“科学者”。これまでの常識を覆し、番手によって異なるアイアンの長さを揃えてプレーする25歳である。すでに欧米ツアーで6勝をマーク。物理学を専攻してきたインテリ系で、何につけても実験を試みる。
今回も検証を重ね、彼が導き出した結論は「旗竿は差したままの方がカップインの確率が上がる」というもの。アダム・スコットらも好印象を抱いている選手だ。
その反面、タイガー・ウッズ、フィル・ミケルソンといったベテラン勢はどうもまだ、しっくり来ない様子。「若者だったら変化をすんなりと受け入れられるんだろうけど……」(ウッズ)。旧規則の元でのパットの得手不得手はもとより、世代間でも意見は違いそうだ。
他方では、松山英樹のような選手もいる。「よくわかんない」。今のところ「差したまま」の効果のほどを実感できず、かといって過去のしきたりに固執する気もない。同伴競技者のやり方に従ったり、あるいは、気分転換で変えてみたりと現段階で一貫性がない。
ひとつ言えるのは、余計なストレスを感じる要素ではなさそうということだ。
ちなみにグリーン上の他の改正として、スパイクマークを修理することが認められた(13.1c)。当初は各選手が修理に時間をかけることでプレーが遅くなるという懸念がささやかれていたが、現場を見る限りそれが要因でスロープレーが相次いでいる雰囲気は感じられない。
それよりもキャディーがピンを抜いて、差して、また抜いての繰り返しの方がよっぽど時間がかかる印象を受ける。
ボールを再設置する時は膝の高さから。
○球をドロップするときは膝の高さから(14.3b)
ニー・ハイ・ドロップ。なんだか新種のプロレス技のように聞こえて仕方がない。ペナルティエリアに入ったときなどは、救済でドロップをしてプレーを再開する。これまでは肩の高さから球を落としていたが、新規則では膝の高さから、が正しい。
小平智は1月の米ツアー、ハワイでのセントリートーナメントで誤って肩の高さから落としたところを同伴競技者に指摘され、やり直して事なきを得た。もしもブルックス・ケプカが、見て見ぬふりをするイヤなヤツだったら1罰打がついていたところだった。
この変更の目的は、これまでドロップした球が転がりすぎ、規定の範囲(ニヤレストポイントから1クラブレングス以内:こちらも2クラブレングスから変更された)を超えて、再ドロップをすることがスロープレーにつながると判断されたから。
JGA等によると、実は決定までには、球を接地させず、わずかでも浮かせてドロップする、もしくはただ置くだけ(プレース)でOKとするという案も出たという。しかし、あくまでショットを打った後のように、球の動きの“不確実性”を重視したというが……。