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ゴルフ界の変わり者・デシャンボー。
物理科学を駆使し、プレーはスロー。
posted2019/02/13 07:00
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph by
AFLO
このごろ、いや、以前からでもあるが、ブライソン・デシャンボーのことが妙に気になっている。何が気になるかって、それは彼独特の思考回路だ。
彼のことをあまりご存じない方々のために、ざっと紹介すると、デシャンボーはカリフォルニア生まれでテキサス在住の25歳の米国人選手。サザン・メソジスト大学を経て、2016年にプロ転向し、下部ツアーで1勝を挙げて米ツアー参戦を開始した。
そこまでの経緯そのものには、別段これと言って特異な点はないのだが、新人時代から彼が人々の視線を妙に引きつけているワケは、彼が大学で学んだ物理科学の知識に基づき、実にユニークな持論を展開しては、それを堂々と実践しているからだ。
たとえば、デシャンボーのアイアンは、すべて同一レングスに統一されている。なぜなら、彼いわく「それが最も効率的であることを科学が示しているから」。
それならば、彼のアイアンは、一体どんな長さに統一されているかといえば、7番アイアンの平均的な長さである37.5インチに合わせてある。なぜなら「7番が一番好きだから」だそうだ。
クラブそれぞれにニックネーム。
とはいえ、彼が物理科学のみにこだわっているかといえば、そういうわけでもないところが、さらに興味深く、物理科学とは無関係に、好みや遊び心に基づく独自の取り組みも披露している。
たとえば、彼のアイアンは長さはどれも同じだが、彼はそれぞれに異なるニックネームを付けている。60度のウエッジは、今は亡きアーノルド・パーマーにちなんで「キング」と名付けている。6番アイアンは、オーガスタ・ナショナルの6番ホールにちなんで「ジュニパー」。モノの本によれば、ジュニパーはヒノキ科の常緑樹のことだそうだ。
いつも愛用しているハンチング帽は、今は亡きゴルフ界の偉人、ベン・ホーガンに敬意を表して被っているという。
そのあたりの言動は、科学者というより、偉人や名コースをリスペクトする謙虚なナイスガイという印象を受ける。