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トルシエ、カタール戦の森保Jを嘆く。
「優しさに満ちて無味無臭だった」 

text by

田村修一

田村修一Shuichi Tamura

PROFILE

photograph byTakuya Sugiyama

posted2019/02/05 11:30

トルシエ、カタール戦の森保Jを嘆く。「優しさに満ちて無味無臭だった」<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

オーバーヘッドによる先制点を決めたカタール代表のFWアルモエズ・アリ。トルシエをして「別世界のシュート」と言わしめた。

身動きが取れなくなっている。

「日本の守備が整っていないのは明らかだった。

 日本は自ら墓穴を掘った。

 試合の入り方を間違えたうえに、相手の得点に衝撃を受けた。カタールはその状況を最大限に生かした。

 日本は普段の力以下だったが、失点の後はサッカーそれ自体も急ぎ過ぎるあまり正確性を欠いた。同点に追いつきたい気持ちが強すぎて、コレクティブにゲームを支配しながら相手の守備を破壊する力を欠いた。不正確なミスが多くゴール前での重さと迫力を欠いていた。得点を挙げるには何かが欠けていた。

 私たちが目撃したのは……自身の戦術コンセプトやプレー哲学の中にずっと留まっていて、先制されても身動きが取れなくなっている日本だった。

 コンセプトの殻を破った日本を見ることはできなかった。だからこそ日本はもっと努力しなければならない。

 日本が理想的なチームを見いだしたのは間違いないし、コレクティブなコンセプトを見いだしたのも間違いない。しかしもっと本質的で人間的な側面、個人の能力の側面ではまだまだ低いところにいると言わざるを得ない。

 ただ、この敗北は、日本が覚醒する契機になり得る。

 この種の大会で優勝するためには、人間的側面が絶対的に必要であることに日本が気づいたかも知れないからだ。

 この日の日本は優しさに満ちていてちょっと『無味無臭』だった。必要最低限のことしかせずに、ここまでの試合はそれでも勝てたが、決勝はそれでは十分ではなかった。カタールを相手にしたときに、驚き、罠に嵌ったうえに、臨機応変な対応もできなかった。

 これは『理不尽な敗北』ではない。カタールが大きく進歩した姿を示しただけで、順当な結果だ。

 カタールが7戦無敗で大会を制したことを、もっと強調すべきだ。

 決して運だけで勝ちあがったのではない。彼らは十分に力を見せつけた。そこはしっかりと留意すべきだ。

 次期ワールドカップ開催国のカタールにとっては素晴らしい出来事だ。無敗のうえに決勝で日本を破っての優勝は大きな価値がある。

 日本にとってはまだまだやることがたくさんあることを気づかせる敗北だった。とりわけ攻撃に関してはパーソナリティーとディターミネーション(決意、揺るぎない覚悟など)、個の強さと競争力が……ペナルティエリアのすぐ外と、その中で必要だった。日本はすでにこの大会で、そこでの効率とゴール前での存在感の欠如を露呈している。日本はゴール前で危険ではない」

【次ページ】 フィジカルな戦いで勝つことが必要だった。

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