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南野拓実ならアジア杯での批判も、
反骨心に変えられる。その根拠。

posted2019/02/05 17:30

 
南野拓実ならアジア杯での批判も、反骨心に変えられる。その根拠。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

カタール戦での大会初ゴールは、相手GKを見極めたチップショットだった。そこに南野拓実の非凡さを感じる。

text by

安藤隆人

安藤隆人Takahito Ando

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photograph by

Takuya Sugiyama

 アジアカップ決勝、日本vs.カタールの一戦。1-3の状況だった89分に交代を告げられた後、ベンチに座るFW南野拓実が何度もテレビ画面に映し出されていた。

 その表情を見て、誰もがこう思っただろう。

「ピッチからは出てしまったが、彼は戦っている」と――。

 真剣なまなざし、そしていろいろな想いを交錯させながら食い入るようにピッチを見つめる南野。その目には、まさしく彼の心の底が映し出されていた。

 結局、彼の想いは届かず、チームはそのまま1-3での敗戦を突きつけられる。

 南野はがっくりと膝に手をついてうなだれた。

得点以外の貢献度は高かった。

 日本が奪った1点は南野が挙げたものだった。0-2で迎えた69分、MF塩谷司がボールを持つと両手を伸ばしてボールを要求。縦パスはFW大迫勇也に届いたが、大迫の落としたボールに即座に反応し、飛び出して来た相手GKの動きを冷静に見て、絶妙なチップキックでゴールに流し込んだ。

 南野にとってこれが今大会の初得点。待ちに待った背番号9のゴールでチームは勢いを取り戻し、さらなる反撃に転じた。しかし83分にアクラム・アフィフのPKにより、その勢いは削がれた。

 点を獲ることにどこまでも貪欲な南野にとって、この結果は到底納得がいくものではなかった。

 アジアカップ前までは森保ジャパン発足後の5試合で4得点と、“エース”としての働きを見せてきた。だからこそ、今大会もその重責を担うことを期待され、自身も期待したはずだ。

 もちろん得点以外での貢献度は高かった。だが「オーストリアはドイツやイングランド、ベルギー、オランダなどと違って日本まで情報が届きにくい。オーストリアで『圧倒的な結果』を生み出さないと、僕のニュースは海を越えないし、絶対に代表には呼んでもらえない」と得点にこだわり続けていた男にとって、その他の活躍で補えるほど軽いものではなかった。

 決勝でのゴールは結局「空砲」に終わり、彼は不完全燃焼でこの大会を終えた。

【次ページ】 ようやく批判を浴びる場所に。

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