月刊スポーツ新聞時評BACK NUMBER
稀勢の里引退で各紙が繰り広げた、
「秘話合戦」から何が見えるか。
text by
プチ鹿島Petit Kashima
photograph byKyodo News
posted2019/02/01 08:00
1月17日、元横綱稀勢の里の荒磯親方は、あいさつ回りで両国国技館を訪れた。
親方になったら雰囲気が変わるかも。
そのギャップについて、「報知」には稀勢の里の信条があった。
《ツイッター、フェイスブックなどで私生活は公開せず。テレビ、CMにも出ない。「力士は神秘的でなければ。孤独になれ」という先代師匠の故・鳴戸親方の教えを守る。》
「サンスポ」の担当記者は、
《「勝っても負けても表情に出すな」という先代師匠の鳴戸親方(元横綱隆の里、故人)の教えを守って、仏頂面と真っ向勝負を貫いたのだろう。》(平成11~17年、22~24年担当 ※サンスポは平成表記)
これら担当記者のコラムを読むと、稀勢の里は横綱としてのイメージを頑なに守り通したことがわかる。
そして親方となった今後は「博識で何でも語れて、満面の笑顔」という新たな顔をメディアで見ることができるかもしれない。横綱だった大乃国が「スイーツ親方」としてメディア露出が多くなった例を超えるかもしれない。期待大。
貴乃花を推してきたスポニチ。
さて、稀勢の里引退ではスポーツ紙の「売り」もあらためて見ることもできた。
引退表明翌日の各紙1面を並べてみよう。
『稀勢 涙 「一片の悔いなし」』(サンスポ)
『引退に「一片の悔いなし」稀勢の里』(ニッカン)
『土俵人生に一片の悔いなし 稀勢引退』(東京中日スポーツ)
『稀勢アキバ部屋 独立来年にも』(スポーツ報知)
ここまでの各紙は「一片の悔いなし」という会見の言葉を引用したものが多かったが、「スポニチ」は違った。
『元貴親方贈る言葉 稀勢』(スポニチ)
そう、スポニチの1面は元貴乃花親方の花田光司氏が軸だったのだ。
一昨年の、あの日馬富士暴行事件はスポニチのスクープで始まったことを思い出したい。貴乃花と(貴乃花が専属評論家を務めていた)スポニチを中心とした情報戦という意味でも興味深かったのだが、稀勢の里引退記事でも貴乃花を推してきたスポニチ。